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 最初に訪れた豊中高架橋の工事現場はジャッキアップ工法を採用したエリア。

「クレーンベント工法では、新たな桁の組み立てから床版の架設までを、通行止め期間中にすべて行わなければいけません。ジャッキアップですと、交通規制前に高架下であらかじめ新しいものを組み立てておくことが出来るので効率的なんです。リニューアル工事で採用されるのははじめての例だと思います」(大原さん)

豊中高架橋で行われたジャッキアップ架設の様子(NEXCO西日本提供)

 通常の高速道路の補修工事では、表面のコンクリート床版だけを取り替えることが多く、桁をまるごと架け替えてしまうような大規模工事はほとんどない。そのため、わざわざジャッキアップ工法を採用する必要がなかった。しかし、今回のリニューアル工事では桁の掛け替えが必要となり、ジャッキアップ工法の採用に至ったというわけだ。

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「作業場所の確保」という問題が…

どちらの方法で新しいものを設置するにしても、その前段階である「既設されているものの撤去」にはクレーンを用いなければならない(NEXCO西日本提供)

 ただし、既設の桁の撤去はジャッキアップではできないので、高速道路上に設置したクレーンを用いる。そのため、作業ヤードを確保することを前提に工事計画を立てなければならないという。

「まとめて一気に高架橋の架け替えができればいいのですが、それだと作業ヤードが確保できません。資材やクレーンを置く場所が必要ですからね。

周りを住宅や一般道、モノレールに囲まれた工事。作業ヤードの確保は重要な問題 ©鼠入昌史

 そこで、一気に架け替えるのではなく上り線と下り線で時期を分けて工事を進め、作業ヤードを確保するようにしています。撤去した古い桁は大阪北部、箕面の方に広い土地を借りていまして、そこに集積して再利用できるものとできないものを分別しています」(大原さん)

壁高欄(壁面の防護柵)の工事などが行われている現場 ©鼠入昌史

 実際に取材した工事現場ではすでにジャッキアップ終了後で、壁高欄(壁面の防護柵)の工事などが行われていた。モノレールや中央環状線などの主要一般道と隣接していることもあって、クレーン作業ができるのは主に夜間。そうした制約もある中で24時間体制で工事を進め、約1ヶ月半の交通規制期間内に道路表面の舗装まですべて終わらせなければならないのだ。