クレーンの横を猛スピードで走るクルマたち
続いて案内された工事現場は6車線から4車線への車線規制が行われている中国池田IC~宝塚IC間のうち、クレーンベント工法によって高架橋の架け替えが行われている荒牧高架橋だ。
6車線から4車線への車線規制とは、上下線それぞれが通常3車線のところ2車線に減少しているということ。工事は残る2車線を利用して行われる。つまり、6車線を3分割し、少しずつ工事を進めていくことになる。
工事は3期に分かれて、最初は上下線の中央部、続いて上り線の路肩側、最後に下り線の路肩側と進む。作業ヤードとして確保できるのも2車線分しかないので、限られたスペースでの施工が求められる。さらにすぐ隣には中国道上を駆け抜けるクルマたち。モノレールが隣を走っていた区間と同じく、シビアな現場なのである。
「これでも実は少しだけ走行車線の幅を3.5mから3.25mまで狭めていまして、作業用のスペースを広げているんです。とはいえ、真横をクルマが通るので簡単にクレーンは使えません。交通量の少ない夜間にさらにもう1車線ずつ規制し、クレーンを使う床版や桁の撤去・架設は夜間に限定して行っています」(大原さん)
ちょうど現場では古い橋桁の撤去が終わり、新しい桁の架設のための準備作業が進められている段階だった。ここでは、以前使っていたコンクリートの桁から鋼鉄製の桁への掛け替えが行われるという。
「素材をまるごと変える」と何が起こるのかというと…
「既設の橋はRC中空床版橋といいまして、鉄筋コンクリート橋でした。これを鋼鉄製に架け替えます。ただ、鋼鉄の桁は鉄筋コンクリート桁と比べて桁が高いんです。路面の高さは変えられないので、桁を支える橋脚を少し低くする必要があり、橋脚を一部改造する工事も行っています」(大原さん)
……ちょっと難しいお話だが、簡単にいうと桁の素材をまるごと変えることにしたため、既存の橋脚との高さが合わなくなるのでその調整をしている、ということだ。
わざわざ桁を変えるということは、古いタイプの桁は劣化しやすいということなのか。
「いえ、そういうわけではないんですね。名神高速道路でも採用されているドイツの技術でして、今でも健全な状態を保っている同種の橋もあります。ただ、これをすべて同じ構造のものに取り替えるとなるとどうしても時間がかかる。より軽量な鋼鉄製の桁に架け替えることで、規制期間を少しでも短くできるんですよ」(大原さん)