年末年始、この時期にきまってテレビのニュースで流れる映像がある。長蛇の列ができている新幹線のホームや空港のターミナルビル、そして果てのない渋滞が続く高速道路。

 あの大渋滞に巻き込まれたいと思っている人は誰ひとりいないだろうが、東京出身で帰省らしい帰省を経験したことのない筆者にしてみるとちょっとだけうらやましくも思ったりするものだ。

例年、帰省渋滞が続くこの頃。高速道路は「盆暮れ正月」関係なく日常を支えている(写真はイメージ) ©iStock.com

 で、今回はそんな高速道路が主役である。もしも高速道路がなかったら、などと想像したら恐ろしい。普段は物流の大動脈としてトラックが行き交って荷物を運び、ひとびとの暮らしを支えている。そして年末年始などの大型連休シーズンになろうものなら、ふるさとや行楽地で過ごすひとびとがこぞってマイカーを走らせる。

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 新幹線や通勤電車も大事だが、同じかそれ以上に高速道路はとてつもなく大切なものなのである。

「築50年」を迎える日本の高速道路

「社会インフラの老朽化」はこれからの日本が直面する大問題。その波は高速道路にも押し寄せている ©鼠入昌史

 ところが、そんな高速道路が老朽化しているという。

 日本で初めて開通した高速道路は、1963年に開通した名神高速道路の栗東IC~尼崎IC間。次いで東名高速道路や中国自動車道などの整備が進み、大都市でも首都高や阪神高速が開通していった。つまり、古いところでは高速道路は50年以上の歴史を持っているというわけだ。

 たとえば中国自動車道。中国吹田IC~宝塚IC間が開通したのが1970年のことだ。東海道新幹線が突貫工事で1964年の東京オリンピックにあわせたのと同じく、中国道は1970年の大阪万博に間に合わせるべく約3年で設計から工事までを完了している。

中国道の中国吹田IC~宝塚IC間が開通したのは大阪万博と同年・1970年のことだ ©文藝春秋

 それから50年。とうぜん老朽化は進んでおり、これまでも部分的な補修や補強などを繰り返してきたもののいよいよ抜本的な対策が必要になった。そうして2020年から進められているのが中国道リニューアル工事だ。

老朽化を進ませる3つの理由

高架下から見上げた高速道路。コンクリートの劣化や鉄筋の腐食が進むなど、高速道路には長年の“疲労”が蓄積 ©鼠入昌史

「老朽化が進んだ原因は単なる経年劣化だけではないんです。開通当時から比べて大型車の交通量が大幅に増えたこと、車両そのものも大型化して重量が重くなっていること、そして冬になると路面凍結防止のために塩化ナトリウムを撒くのですが、それにともない鉄筋の腐食やコンクリートの劣化が進んだこと。この3つが大きな要因なんです」

 こう教えてくれたのは、阪神圏の中国道リニューアル工事を担当しているNEXCO西日本関西支社阪神改築事務所の大原和章所長だ。