「『遅れました、ごめんなさい』はできないですから」
そしてもうひとつ、大原さんをはじめとする工事担当者の頭を悩ませたのが工事スケジュールの管理だ。
終日通行止めを含む大規模な交通規制を行う以上、ドライバーや沿道住民への影響は最小限にとどめなければならない。工事が期間内に終わらずに規制期間を延長、などということがあっては市民生活に大きな影響を与えてしまう。そんなことは絶対に許されないのだ。
「『遅れました、ごめんなさい』はできないですからね。特に今年の5月から6月にかけて初めて約40日間の全面通行止めを行った際は、ちゃんと終わるのかどうか正直ドキドキでした。本当に、関わっていただいたみなさんのおかげですよ」(大原さん)
40日間、2万人を確保…「“新しくつくる”と“直す”はまったく違う工事ですから」
さらに、目下のコロナ禍もある。工事は受注業者が3交代制の24時間体制で続けている。40日間で携わる人は延べ2万人。ただ、万が一どこかでコロナ感染者が出てしまってチームごと離脱することになると工事が間に合わなくなるおそれがある。
そのため、現場の工事関係者は感染予防の徹底はもとより、継続的な検査も行うなど、万全のコロナ対策も求められたというわけだ。
「だから何より大変なのは工事を受注した業者さんだったと思いますよ。いまは全国的にもこういう工事は人手不足。短期間、40日間にあわせて延べ2万人をきっちり確保しないといけないわけですからね。それに交通規制を行っている40日間以外も準備作業があるので……」(大原さん)
交通規制とそれに伴う迂回ルートの周知、さらに決められた期間内に確実に工事を終える工程管理。それを実現するための人員確保。大原さんが「“新しくつくる”と“直す”はまったく違う工事ですから」と話すように、実際にいまも日々クルマが走っている高速道路の“リニューアル”は想像以上に困難が多いのだ。
では、高架橋の架け替えというダイナミックな工事をどうやって短期間で進めているのだろうか。それはまた、記事を改めてみていくことにしたい。
記事内で紹介できなかった写真が多数ございます。こちらよりぜひご覧ください。