「関西都市部の中国道では特に、大型車交通量の増加と車両の重量増の影響は大きいですね。どちらも開通当時より段違いに増加しています。たくさんの大型トラックが毎日繰り返し走っていると、道路には“疲労”が蓄積されて、それが劣化につながっていく。
もちろんこれまでも計画的に点検を行いながら必要な補修や補強を繰り返してきましたが、これも限界に来ています。なので、抜本的な対策としてリニューアル工事を行うことになりました」(大原さん)
「鉄筋コンクリート橋は50年が寿命と言われています」
名神や東名など他の高速道路や新幹線も同じだが、高度経済成長期に相次いで建設された日本の交通インフラ。当時は“永久構造物”などと言われていたというが、「鉄筋コンクリート橋の寿命は一般的に50年と言われてきました。もちろん、建設時の設計基準や構造、使用材料、大型車の累積交通量、凍結防止剤の累積散布量、補修・補強の方法などによりその寿命は大きく左右されますけどね」と大原所長。
実際、マイカーやトラックの台数も50年で大幅に増加したし、安全基準の引き上げなどでクルマそのものも乗用車・トラックに限らずかなりデカくなっている。そうした社会情勢の変化が高速道路にも影響をもたらしてきたのだ。
そのため、老朽化した道路インフラの更新を進めるべく2015年には特定更新等工事(高速道路リニューアルプロジェクト)が決定される。築年数や損傷状況、交通量などを加味しつつ、約15年で全国の高速道路のリニューアル工事を行おうというものだ。
事業規模はNEXCO3社(東日本・中日本・西日本)で合計3兆円。1社でおおよそ1兆円の予算をもとに具体的な工事計画を策定し、それに手がつけられたもののひとつが中国道のリニューアル工事、ということになる。
「中国地方の山間などにある高速道路では、冬に凍結防止剤を多く撒くこともあって、阪神圏以上に老朽化が進んでいました。ただ、こうした区間は山間部で交通量が比較的少ない場所でもあったので、上下線いずれかの道路を通行止めにして工事を行い、もう一方を対面通行にして交通路を確保することで、大きな渋滞もなく工事を相当進めることができました」(大原さん)
一方で、阪神圏の中国道リニューアル工事では、老朽化した床版(路面の下の部分)を新しいものに取り替えたり、高性能床版防水工と呼ばれるコンクリート床版の劣化を抑制するための工事などを行う。いわば道路表面や橋を「総とっかえ」し、高速道路の高架橋をまるごと架け替える作業である。また、架け替える橋の数自体も膨大で、都市部であるため交通量も多く工事用のスペースも狭い。