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どうしたら日本はイノベーターが集まる国になれるのか? 内田樹と仲野徹が語る「コロナ後の社会」

内田樹✕仲野徹対談 その2

source : ライフスタイル出版

genre : ライフ, ライフスタイル, 社会, ヘルス, 医療

note

外国人は日本に働きに来なくなるのでは

 よく考えれば、里山が過疎化・無住地化すると、それはそれで資本主義的な「使い道」はあるわけです。農業も林業も水産業も生態系が守られていなければ生業としては成立しません。だから、第一次産業の従事者にとって生態系の維持は必須です。でも、もし里山が太陽光パネルや産廃処理場に使われるなら、生態系に配慮する必要なんかない。そこに人が住んで、生業を営んでいるから生態系を守る必要があるので、地域住民がいないなら、有害物質も垂れ流し放題だし、大気汚染もし放題です。だとしたら、広い土地があって、人が住んでいないという条件は一種のビジネスチャンスでもある。そう考えて、手ぐすね引いて人口減少を待っているビジネスマンがいても僕は不思議じゃないと思います。

仲野 人口減少問題というと、すぐ移民で解決みたいにいう人がいますけど、遠からず外国人は日本に働きに来なくなるのではないでしょうか。賃金が低すぎて魅力がないからと(笑)。アメリカではノーベル賞受賞者とかベンチャーですごい儲けてる人って移民か移民の子供がめちゃくちゃ多いのが特徴で、そういった人たちがイノベーションを引き起こしている。スティーブ・ジョブズだってシリア移民の子でしたし。

内田 カリフォルニア州だとすでに人口の25%が「アメリカ以外」の生まれだそうです。大学院の博士課程でも中国人、インド人、韓国人、台湾人らアジア系がひしめいている。そういう移民一世二世がイノベーターとなってアメリカの学術やテクノロジーを進化させている。

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必要なのは社会の流動性

 移民政策というと、ふつうはマンパワーを入れるというふうに考えますけれども、実際に国力を向上させようと思うなら、必要なのはイノベーターなわけです。でも、今の日本は、マンパワーが世界各国から集まって来るほどには雇用条件がよくないし、イノベーターを惹きつけるようなシステムに至ってはまったく存在していない。

 先日、イスラーム法学者の中田考先生と対談したときにも「これからどこが覇権国家になるかは、どれくらい他国からイノベーターを集められるかで決まる」という話になりました。才能のある人たちをどれくらい集めることができるか、それがこれから国力の勝負になる。

仲野 まさしくそうでしょうね。そうなるとアメリカが圧勝かなぁ(笑)。医療的な視点に限らずですが、イノベーションについて言うと、日本は向いてないのかもしれません。移民の受け入れと登用も含めてですが、社会の流動性が必要なのではないかという気がします。