コロナ後の世界で日本が生き残っていくには
たとえば、ワクチン開発に国が多額のお金を投下するとします。日本では、短期間にその領域に人材が集まるということがあまりおきないでしょう。だから無駄な機材を買うことに使われたりしてしまう。それではダメで、必要とあらばその分野に人材、それも多様な人材が周辺領域から集まってくるようでないと。
今回のワクチンみたいに、後手に回ったから押っ取り刀でお金を出すということをしても、そのお金が有効に使われるとは限らない。下手をすれば、結果として医療資源の無駄遣いになりかねません。羮に懲りて膾を吹くようなことを繰り返していても意味がない。有効に医療資源を活用するにも、多様な人材の活用が必要ではないかと思います。
最後になりますが、コロナ後の世界で日本が生き残っていく道筋はどこにあるんでしょう?
内田 とにかく雇用条件をよくすること、多様性に対して寛容な社会を作ることで、海外から人を集めることが急務です。ただし、短期的にマンパワーを集めても、その人たちが日本に定住して、活発な消費活動をし、かつ地域社会の支え手になってくれないと、人口減少には対応できません。しかし、今の日本の排外主義的な風潮や入管制度の前近代性を見る限り、日本が「開かれた社会」になる可能性はきわめて低いと思います。
内田樹(うちだ・たつる)
1950年東京生まれ。思想家、武道家、神戸女学院大学名誉教授、凱風館館長。東京大学文学部仏文科卒業。東京都立大学大学院人文科学研究科博士課程中退。専門はフランス現代思想、武道論、教育論など。『私家版・ユダヤ文化論』で小林秀雄賞、『日本辺境論』で新書大賞を受賞。他の著書に、『ためらいの倫理学』『レヴィナスと愛の現象学』『サル化する世界』『日本習合論』『コモンの再生』、編著に『人口減少社会の未来学』などがある。
仲野徹(なかの・とおる)
1957年、大阪市生まれ。大阪大学大学院・生命機能研究科教授。大阪大学医学部卒業後、内科医から研究の道へ。京都大学医学部講師、大阪大学微生物病研究所教授などを経て、2004年より現職。HONZレビュアー。専門は「いろんな細胞がどうやってできてくるのだろうか」学。著書に『こわいもの知らずの病理学講義』『からだと病気のしくみ講義』『みんなに話したくなる感染症のはなし』『仲野教授の笑う門には病なし!』などがある。