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「蛍ちゃん(蛍原徹)が、俺が言いにいってやるよ、って」『ボキャ天』で大ブレイクも…おさる(53)が語る、90年代に感じた「テレビの壁」

おさる氏インタビュー #1

2022/01/02
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――何の脈絡もなく謝ってる。 

おさる そう。「すんまそん」が最初ウケた時って、なんかしでかして「謝れ」と言われて、「すんまそん」と返したのがウケたんですけど。おかしいと思いながらも、言ってましたね。なんでこうなるのかなって思いながら。今だったらなんでも100%でできますけど。 

作家さんが考えたダジャレでスベると……

――当時は20代……。 

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おさる そうですね、20代後半から30前後。 

――人間的にも尖ってる時期ですよね。そういうのがやりたくてこの世界に入ったわけじゃない、みたいな。 

おさる そうそうそう。だから『ボキャブラ』も、ダジャレのトーナメントだったじゃないですか。でも「ダジャレ=おやじギャグ」だったから、ダジャレってそもそもどうなんだろうっていうのは若手の時はみんな話してました。

 当時ね、収録の時にネタを持っていくんですけど、作家さんが考えたネタもいっぱいあるんですよ。これアニマル梯団に合うんじゃないかってそっちも収録する。それで蓋開けたら作家さんのが使われてたりして。

 だいたいみんなそれで「テレビってなんだろうな」ってなってた。つらいのは作家さんが考えたやつが使われて、ウケないときです。 

――キツいですね。 

おさる みんなもう楽屋で「俺何やってるんだろうな」って。自分たちが考えたのでウケなかったら、反省もできるし、その後開き直ってワーッと暴れられるんですけど。作家さんが考えたやつでスベってるというのも誰にも言えないし。視聴者に「お前たち、今回最悪だな」なんて言われてね。そういうこともありましたよ。でも今だったら100%でできますよ、そんなの関係ない。 

 

――作家さんが考えてくれたネタでも。 

おさる そうそうそう。僕たちに1秒以上の時間をかけてわざわざ考えてくれてるんだと思ったら、思いっきりできます。でも当時は、なんでこんな風になるんだろうって気持ちになっていた。 

スベることを期待されるように

――『ボキャブラ』には色々な意味でテレビの現実があったんですね。 

おさる そうですね。テレビって一番面白い展開を欲しがるんだなと思いましたよ。今回は面白い感じがあんまりなかったね、では済まされない。もう絶対に今週の100%をみなさんが出していきたい場所。 

――ウケるもすべるも、両極端がいい。 

おさる そう。そこでウケて面白い人はそのまま。スベった人、僕らはそこが多かったんですけど、外野席と呼ばれるところで「おいおいおーい」って言って盛り上げて帰ってく。

 それが面白いってなると「来週もちょっと期待してますよ」って言われるんです。もうそっちを期待されちゃうの。(ランキングの)上に上がんなよっていう圧ですね。スベるイメージついちゃったら怖いなと思いながら、まあついちゃったんですけど。