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格闘家に「お前ふざけんなコラァァ」と怒られ…

――勝ち方ではなく「負け方」を想像していた。 

おさる どういう風に負けたらストーリーになるかって。

 試合の前日に、格闘家の武蔵さんの弟のTOMOさんが、そのジムに訓練に来ててお会いしたんです。「明日試合ですね。僕ら明日東京帰りますけど、頑張ってください」って言われたから「でも負けますけどね」って笑いながら言ったんです。

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 そうしたら「お前ふざけんなコラァァ」って。「負けるって、お前自分で負けると思ってるんだったら、もう今から試合取りやめろ!」「俺たち生きるか死ぬかで、絶対生きると思って毎回やってるんだから。お前お笑いでやってるんだったらもうお笑いだけでやってくれ。もう気分悪いわ」って初対面で、たぶん年下だけどすっごく怒られて。 

 

――うわあ。 

おさる もう強いし怖いし。震えながら「じゃあ勝ちます」って言ったら、駄菓子屋さんで10円のファンタグレープおごってくれて「俺おごったからな、絶対勝てよ」って。それでその晩、「絶対勝つ、絶対勝つ」って切り替えました。 

――どうなりましたか。 

おさる 最終ラウンドの3ラウンドでも決着つかなかったんですけど、全然終わろうとしないんですよ。俺は3ラウンドで終わりって聞いてるから「ディレクターさん、これ終わりですよね」って叫んでるのに、見えるのはタイ人ばっかりで、ディレクターさんはどっか遠くにいて。

「いやちょっと待って、いやいやレフリー、違う違う、俺3ラウンドで終わりって聞いてるから。スリー、スリー」って言っても、僕グローブつけてるじゃないですか。レフリーはなんか一生懸命グローブをあげてる僕を見て「あっ、こいつやる気だな」って思っちゃったみたい。 

――(笑)。 

おさる とにかくもう終わらせたくてワーッとやったら当たって、向こうが倒れたんですよ。試合後のインタビューで対戦相手が「やつの右ストレートをよけれるプロはいないと思う」って言ってくれて。「5ラウンドいったら死ぬ」と思って必死だっただけなんですけど。 

今でも鍛え上げられている筋肉。ジムなどには通っていないという

――『ボキャブラ』の時に、視聴者への見え方としては「負け」だけど、番組としては正しい……という戦いをずっとやられてきて、だからムエタイの試合の前もまず「負け方」を想像してしまったのでしょうか。 

おさる そうそうそう。やっぱりお笑いの性というかね。うまくいっちゃって、「それどうなの」って言われるより、バーッととっちらけで笑いで終わった方がいい、みたいな。 

――その時に「生きるか死ぬかなんだよ。勝てよ」と言われたら、衝撃ですよね。 

おさる 衝撃でしたよ、もう。