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アルゴリズムへの規制強化が?

 肥大化する民間IT企業の実力を警戒する中国政府も、このアルゴリズムに関する規制へと乗りだしている。一つのキーワードとなっているのが「大数据殺熟」(ビッグデータによる常連客殺し)。商品販売時にすべての顧客に同一の価格を提示するのではなく、一人一人の顧客に特別の価格を提示することをパーソナルプライシングと呼ぶが、ビッグデータの分析により、ある顧客がこの商品にいくら支払えるかを読み取り、支払える限界までつり上げた価格を表示する。こうした手法が広く使われていたとの懸念が広がっている。「ネットショッピングをしようとサイトを開いたが、新しいスマートフォンで見た時と、何度も買い物し会員登録しているスマートフォンで見た時と価格が違った。後者の値段が高かったのだ」といった話が注目を集めているのだ。本当にやっているのか、明らかな証拠はないが、中国政府は「大数据殺熟」を禁止する方針を打ち出した。

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 デリバリー配送員の管理とネットショッピングの二重価格、この二つの問題は通底している。ある個人がもっと働ける、もっと支払えるという余地があることをアルゴリズムが正確に把握し、労働者や消費者の利得を奪おうというのだ。この流れを突き詰めていけば、経済は究極的に効率化されるが、人々からはゆとりが失われてしまう。これを危惧した中国政府は歯止めをかけようとしている。2021年9月に「インターネット情報サービスアルゴリズム・リコメンド管理規定」(パブリックコメント稿)が公表された。アルゴリズムの透明性を向上させること、人々が閲覧する情報やコメントの誘導をしてはならないことなどが規定されているほか、ユーザーが望んだ場合、パーソナル化されたアルゴリズムの提供を停止することも盛り込まれている。

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 スマートフォンの画面をスワイプしているだけで無限に時間が消費できる、世界で流行するアプリ「ティックトック」を提供するバイトダンスも、パーソナル・リコメンドを停止する設定を追加した。