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データを活用するうえでのデメリット

 データの統合と活用にメリットがあるとしても、権力の暴走というデメリットをいかに防ぐのかが問われている。

「データの統合を認めつつも、問題がある手法をとっていないかを、事後的にチェックしていく制度をセットにすることが必要になる」と大屋教授は指摘する。データの統合ができないような仕組み作りによって悪用(善用もだが)できないようにするのがこれまでの日本だった。今後は監視の目を光らせながらも運用を認めていく形へと、政府と社会の関係性を変えなければならないと説く。

 政府に権力を与えた場合でも、過剰な人権の制限や国家の暴走を許さないよう、事後的にコントロールできるか。この点について、日本人の多くは自信を持っていないようだ。

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 ギャラップ・インターナショナル・アソシエーションが2020年4月、世界18ヵ国の人を対象に実施した国際世論調査がある。「ウイルスの拡散防止に役立つならば、自分の人権をある程度犠牲にしてもかまわない」という設問に、「そう思う」と回答した比率は、日本は最低の40%。先進民主主義国でもアメリカは68%、ドイツは89%と大きくかけ離れている。

「個人情報が取られるのは“なんとなく”怖いという不安が忌避感につながっている」

 私と共著で『幸福な監視国家・中国』を執筆した、梶谷懐・神戸大学教授は、茫漠とした不安では監視社会化の歯止めとしては脆弱だと危惧する。

 そもそも、先進国で監視社会化抑止のよりどころとなっていた人権やプライバシーといった理念は、生存が保障された状況でより良き社会をめざすための主張であり、コロナのような命そのものが脅かされる状況では分が悪い。

 梶谷教授は「中国の成功を見れば、日本を含む西側諸国の市民が、“民主的”に監視社会化を望むようになるまで、あと一歩だろう」と指摘し、データの収集と統合は不可避の趨勢だとしても、同時に、市民の積極的な関与などの抑止的手段を組み込む必要があると警告する。

 日本のデジタル行政改革が始まろうとしているが、中国型の監視社会とは異なる道を歩むために何をなすべきかが問われている。

【前編を読む】中国政府は新型コロナウイルスの拡大抑制に成功した!? 日本人が知らない“中国式ロックダウン”の“知られざる真実”