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事実、同書に掲載された社外向けのメールの例文はこんな感じである。
件名:商品の見積りを送ってください
○○産業 楠田様
貴社ますますのご繁栄のこととお喜び申し上げます。
さて、○月○日に来社されました際に伺った○○商品について当社の関係者に説明をしましたところ、見積りをいただこうということになりました。
つきましては、○○商品の見本と100ケース当りの見当でお見積りをいただきたいと存じます。
よろしくお願いします。
以上
本のなかでは社内メール4通、社外メール6通の例文が収録されているが、冒頭部が「お世話になっております」に近いものは1通しかない(ちなみに「お疲れ様です」からはじまるものもみられない)。
現在の私たちにおなじみの書きおこしとは別の形式が、メールのマナーとして提案されかけていたこともあったのだ。
村上龍のメール指南書から考えるSlackマナー
いっぽう、この時期には小説家の村上龍氏の『eメールの達人になる』(集英社新書、2001年11月刊)や、ノンフィクション作家の枝川公一氏の『メールのためのe文章入門』(朝日出版社、2002年7月刊)など、大物作家によるメール文章術も刊行されている(かの村上龍氏が「eメール」の本を書いていたのだ!)。
村上・枝川両氏のメール指南書は、それぞれプライベートからビジネスまで各種の文例を紹介しつつ、ビジネスシーンでもある程度はカジュアルな書きかたをするように提案している。先の『最新版 会社文書・文例全書』がかなり堅いメール文体を紹介していたのとは正反対の方針だ。