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(3)プノンペン駅とカンボジア鉄道(@カンボジア)

フランス統治時代に建設されたプノンペン駅舎【◆】

 カンボジアの首都・プノンペンには、フランス統治時代に建てられた駅舎を構える中央駅がある。もっとも、1960年代にはタイへ直通する国際列車も発着していたという往年の栄華の面影は、今はない。

プノンペンからバッタンバンへ向かう途中駅にて。客車に窓ガラスがないのがわかる【◆】
混雑する列車内。外国人旅行者は他に一人もいなかった

 長い内戦の過程で、カンボジアの鉄道は荒廃した。沿線には地雷が埋められたままで保線が十分に行えず、半ば廃車体のようなオンボロ車両が現役の旅客車両として使用された。夜になると反政府ゲリラなどに襲撃されるので、列車の運行は昼間に限られた。

 諸外国の支援で鉄道再生事業が図られているが、旅行者の大半は並走する自動車道路を行き交う高速バスに流れてしまっている。快適さとは程遠い環境、治安の悪さ、そして列車の利用時には地元のクメール語以外はほぼ通じないこともあり、カンボジアの鉄道施設で外国人旅行者の姿を見かけることはほとんどない。

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プノンペン駅の切符売り場。クメール語ができないと利用は難しい

 だがその分、鉄道沿線ではカンボジア国民の日常生活が身近に感じられる。数日に一度だけの列車はいつも満員で、名前もわからない途中駅はどこも普段着の沿線住民でごった返す。プノンペン駅は、外国人観光客には見えにくいカンボジアの日常空間への玄関駅でもあるのだ。