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「どうせ教頭から聞いたんやろ。俺は何も悪いことはしてへん」

「セキは偕星を離れてからも度々野球部関係者に連絡を入れ、『警察からGo Toのことは訊かれていないか』と探りを入れていました。しかし捜査が続いていることを知っていた人も、誰もセキにはそのことを伝えなかったようです。なので今回の逮捕は寝耳に水でしょうね」

 筆者も一度だけ、山本から連絡を受けた時に「Go Toトラベル詐欺」の話題をぶつけたことがある。すると山本は、開き直るようにこう話した。

「どうせ教頭から聞いたんやろ。俺は何も悪いことはしてへん。保護者にだってちゃんと説明しているんやから」

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 大阪偕星学園高校が甲子園に初出場した2015年8月に、筆者が「現代ビジネス」に寄稿した原稿には、山本のこんなコメントがある。

「私の指導方針は、平等に選手と接するということ。複雑な家庭環境の子もいるし、ユニフォームを購入することもままならない家庭もある。私らはそういう家庭を基準にして、部費もわずかしか集めていないし、たとえば岡山に遠征するにしても、1泊2日で2500円、しかも食事付きでやりくりしている。過去には廃盤となったユニフォームを500円で購入し、マジックで学校名のアルファベットを書いて試合を戦ったこともありました。別にユニフォームで相手と試合をするわけじゃない。試合が始まれば、貧乏人も国籍も関係ない。貧乏人が金持ちにも勝つことができる。すべてが平等なのがスポーツです」

大阪偕星学園高校

 そのやり方に問題は数あれど、野球に励む生徒への指導の熱は人一倍で、甲子園にかける情熱だけは本物だった——と私は今でも思っている。だが山本は、その教え子たちをだしに使い、大阪府警が発表したおよそ80万円だけでなく、水落のメールから推測すれば300万円近い金額を国からだましとっていたことになる。

 合宿における保護者の負担は2000円と安価な設定だった。だからこそ、実際の宿泊費が2万円だったと発覚しても保護者から怒りや疑問の声はほとんどあがらなかった。生徒や保護者の負担を減らしながら、その裏で給付金を不正に取得する手口は巧妙で狡猾だ。

 1月12日に逮捕された後、山本は前回の逮捕時と同様、警察の取り調べに対して罪状を否認しているという。せめて生徒を裏切るこの疑惑こそ、山本には説明責任を果たして欲しいと強く願うのだ。