――「トリガーポイント」っていわゆるツボとは違うんですか?
小池 一部重なるポイントもありますが、東洋医学で昔から言われている、ここを押すと〈気の流れや血流がよくなる〉といった決まった位置にあるとされる『ツボ』ではなく、その人の体の癖や生活習慣のなかでできる筋膜がよれて硬くなったしこりが「トリガーポイント」です。だから位置はあくまで目安で、人によって異なります。指で押すと、一番ズンッと響く痛気持ちいい場所がその人にとってのトリガーポイントです。
近年、ファッシャとも呼ばれる筋膜は研究が大きく進み、〈自律神経系、内分泌系、免疫系〉の3つを整える生体システムとしての捉え直しが進んでいます。じつは全身のネットワークを調整する要は筋膜にあり、体を回復させるアプローチ法として非常に効率がいいのです。
鍼と近しい効果でいつでもできるようにしたものが「トリガー体操」
論より実践。早速腰回りを軽くするいちばん手軽で基本となる体操をひとつご紹介しましょう。
まず立って肩幅に足を開きます。腰に手をそえ、骨盤の一番高いところに親指をグッと差し込みます(親指でやると痛い人は写真のような鉤爪で)。腰骨ではなく、脇腹との境目のくぼみで、押したときにいちばん痛気持ちいいポイントを見つけてください。
手を添えたまま、5秒で鼻から大きく息を吸います。次に5秒かけてゆっくり口から息を吐きながら、おへその指3本ぶん下の丹田のベクトルに向かって、トリガーポイントをしっかり圧迫します。上体をやや倒して、体の重みで深く圧を入れていくイメージです。
この「5秒で吸って・5秒で押しながら吐く」のセットを2~3分間、体がポカポカするまで繰り返します。
――ちょっと痛いくらい。体の奥にじんじんきますね。
小池 筋膜のビーフジャーキー度が深刻な人ほど、筋肉が突っ張って圧が入れにくかったり最初のころ強めの痛みを感じたりするかもしれません。これはトリガーポイントを物理的に破壊して、筋膜と筋肉の癒着をとっているんです。私の治療院ではこれを鍼で行いますが、鍼と近しい効果でいつでもどこでもできるようにしたものがこの「トリガー体操」です。
――だんだん呼吸が深くなって、体温が上がってきました。
小池 その方の体質にもよりますが、発汗作用が強いメソッドで、だんだん汗ばんでくると思います。次に同じポイントを圧迫したまま、左右に腰をスイングしてください。リズミカルに楽しく10回往復しましょう!