KAT-TUN亀梨和也「抜けたメンバー3人に対して…」
――記憶に残った名コメントといえば、KAT-TUNの亀梨和也さん。「抜けたメンバー3人に対してもこの15周年で紅白のステージにKAT-TUNとして立たせていただいているという、そこを見て何か感じてもらえるようなステージにしたいと思います」と。
福島 良かったですよね。台本には〈色々ありましたけど、こうやって紅白のステージに立てて嬉しいです。(などお答えください)〉としか書いていないし、リハでも全然。曲の前のVTRに2006年のデビュー曲「Real Face」のCDジャケットを入れたんですけど、僕はあれを絶対残したくて。
「ザ少年倶楽部プレミアム」で亀梨さんが「チームとして、KAT-TUNとして、過ごしてきている時間って何にも代えられない」(2021年3月19日放送)と語っていたように、3人で残ってチームを続けているというその絆を描くためには、最初は6人だったことを言わないと伝わらないと思ったんです。もちろんいろいろなことがあって3人になったのであまり蒸し返されたくない部分かもしれない。でも、亀梨さんが本番でああいう風にコメントしてくれて、感動しました。
――6人のジャケットを見て、「あ、いいんだ」とちょっとびっくりしました。
福島 事務所の方々にも納得していただいて。ジャニーズのアーティストの皆さんにはファンからの期待値が特に高いので、すべてのステージが紅白スペシャルバージョンです。KAT-TUNでこだわったのは、「Real Face #2」が始まったところでセットと映像が動き出してKAT-TUN仕様になっていくところ。
Snow Manは2020年にコロナで出場できず、1年越しの紅白でした。東京国際フォーラムの演出の秘策として、上空に仕込んでいたウイングパネルというのがあるんですよ。迎える僕らの準備として、最大限の華々しさを作るために、そのパネルが実は上下して動くという演出をSnow Manで初めて使いました。前回「D.D.」をやるはずだったので、もう一度「D.D.」を。ダンスは紅白仕様になっていて、カット割りはメンバーの抜きとグループ全体をバランスよく撮りにいったつもりです。メンバーの表情や躍動感が一番大事なので、ほとんど誰もセットには気がついていないかもしれませんが、「マツケンサンバII」の前に、上空ではそういうことが起きていました(笑)。
「幻のオリンピック開会式をやりたかったんだろう」
――「みんなが見たかったオリンピック開会式」と大反響でした。しかも劇団ひとりさんが。
福島 「オリンピックの開会式でいたずらしてた人」として紅白にも登場していただきました。僕は「コントの日」という番組に携わってきて、劇団ひとりさんが大好きなので、あの企画には結構力が入りました。ひとりさんに、あれのパロディをやらせてくださいとずいぶん前から言っていたんです。
確かに「幻のオリンピック開会式をやりたかったんだろう」と言われたりもしたんですけど、そんな大げさなことでもなくて。この2021年をどういう形で振り返ればエンタメになるのか逆算で考えて、僕の中では自然に「マツケンサンバ」とオリンピックやパラリンピックを絡めることが必要だろう、今回はあの形が面白いんじゃないかなと思いつきました。
これからは紅白がその年を映す鏡みたいな番組になっていけばいいですよね。これまでは社会へのコミットメントの部分ができていなかった。単なる歌合戦じゃなくて、世相が反映されて、みんなが納得する形で「今年ってこういう年だったよな」と思えて、さらに来年へ向けた提案になっていれば。
――それこそ2021年は、森喜朗氏の女性蔑視発言や、MIKIKO氏解任などの五輪開閉会式のトラブルが次々と起こり、「おかしいものはおかしい」と声をあげる流れができた1年でした。そういった解釈を番組の演出に反映しようという意図はあったんでしょうか。
福島 紅白でやるべきかどうかはすごく悩みました。あまりにも教科書的なメッセージがエンタメより前に出てしまうと楽しめないじゃないですか。ただ、「もう紅白ですら『カラフル』と言い始めてますよ」という入り口から、ある年齢層以上の人たちにも社会の変化を認識してもらいたくて、直球ではなくエンタメの中にそういう要素を混ぜる……というのを意識的にやりました。当然、僕も男性なので、男性優位の社会で生きてきて申し訳ないという気持ちも少なからずありますし、自己反省も含めて、そういった声を反映させた番組じゃないと、もう世の中から受け入れられないだろうなと。