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SMAPも嵐もいない紅白「スター不在だなんて全然思ってない」

――紅白の本番直前に、福島さんは「お茶の間はほぼ消滅したと思っているんですけど、でも紅白が家族の会話の糸口になることはあると思っていて、そういうことが起こったら」と話していましたよね。SMAPも嵐もいない紅白、スター不在で難しいなとは思いませんか。

福島 確かにSMAPと嵐は紅白にとって大きかったですが、スター不在だなんて全然思ってないです。日本の音楽シーン、今すごいですよ。藤井 風さんみたいな怪物もいるし、シティポップとかラップとかいろいろなものがミックスされてお洒落な音楽を作っている人たちや、才能のあるアーティストが紹介しきれないほど、まだまだたくさんいます。

 もうお茶の間とかは存在しないのかもしれないし、スマホ片手に紅白を流し見している若い世代の近くで、親や祖父母世代はテレビだけ観ていたり、昔とは形が変わっていても、きっと何か会話が生まれているだろうし、生まれていてほしいなと思って構成を考えていて。たとえば細川たかしさんの歌声を聴いて「こんなに歌うまい人がいたんだ」って思えたり、「細川たかし 若い頃」で検索して「こんなビジュアルだったんだ、髪型もだいぶ違うな」とか(笑)。これはNetflixを一人で観ていたら生まれないコミュニケーションだし、そういうクロストークが生まれるような紅白を作りたいですね。

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氷川きよしさんには「ご本人の言葉で語っていただきたかった」という思いで「(お答えください)」と書いた台本。本番の歌唱前、氷川さんは「自分の歌手人生と重ね合わせながら、歌わせていただきたいなと思っています」と答えた

――怒涛の紅白歌合戦、終わったときの心境はいかがでしたか。

福島 ホッとはしましたね。でもやっぱりもうちょっとやれることがあったんじゃないかなって、23時半くらいから思い始めて。

――終わる直前。

福島 「もうちょっとやれることあったかもな」って最後の15分くらい後悔しながら終わったというか。「まだ何かできたんじゃないかな」って。だからテレビの仕事は楽しいんですけどね。

――見返しました?

福島 もちろん、何度も見返して。「あそこのテロップ、ああじゃなかったな」とか、「あのカメラワークが違った、照明が違った」とか、100個くらいありますし。だけど、いつまでもくよくよ言ってると、出演してもらった方々に失礼なので。本当に120パーセント全力でやったんですけど、満足したかと言われたら、やっぱり工夫が足りなかったなという気持ちがちょっとだけ勝って終わりました。

先輩の時代は「NHKらしからぬこと」をやっていればよかった

――昨年は「紅白を変える」と走ってきて、反省はありつつも、何割くらい目標を達成できたと思いますか。

福島 うーん、そうですね……。6割くらいですかね。結局、紅白のテーマだってロゴだって、大変でしたけど変えられているので、NHKって結構自由なんだなと思いました。

 こんな僕でも尊敬している先輩が5人くらいいて、僕以上に変革者であるその人たちがいなければ今のNHKはないと思っているんですが、先輩たちの時代は「NHKらしからぬこと」をやっていればよかった。NHKなのにコントをやる、NHKなのに芸人さんが司会をする、NHKなのにクドカンのドラマをやる……。次は僕らの世代がオリジナルのコンテンツを作っていかなきゃいけないと思っています。

――コンテンツへの愛をもって、中から変える人は必要だと思います。

福島 僕らにそれ以外の仕事はないです。その人が一番輝くために整えるという裏方の仕事なので。愛がないとコメントが荒れます。やっぱり一番嬉しい感想は、「分かってる」というやつなんです。「NHK分かってる」。

写真=末永裕樹/文藝春秋