火を噴く国産車
不買運動で最大の標的にされたのは韓国ユニクロだった。ソウルの冬にヒートテックは欠かせず代替品もないため、11月にはユニクロ前に行列ができることになる。ノー・ジャパンが展開された19年の冬もその光景は変わらず、自分たちに都合の良い「選択的不買」のはしりとなったが、そのユニクロと同じく狙い撃ちされたのは、トヨタとレクサスをはじめとする日本車だった。
不買運動がはじまった当初、キムチをぶつけられたり、落書きをされたりする日本車の被害が頻発した。また、日本車への給油を拒否するガソリンスタンドや修理サービスを断る自動車整備工場まで現れて、日本車の購入を躊躇する消費者が増えた。被害にあった日本車のオーナーや日本車を買いたくても断念したのは、ほとんどが日本人ではなく韓国人である。
実は、不買運動の前年、韓国トヨタは過去最高の売り上げを記録していた。韓国は世界有数の高級輸入車大国である。理由はステータスと安全性だ。韓国では多くの運転手が他車の割り込みを阻むために車間を詰めて走行するのだが、前を走る車が高級輸入車なら車間距離をきちんと取る。コントみたいな世界だ。
また、片側3車線以上の道路で2台の車の間をすり抜けるときも高級輸入車とは距離を空け、国産車の方に幅寄せする。駐車場で空いているスペースの隣が、一方が高級輸入車、他方が国産車の場合なら駐車するために寄せるのは国産車の側だ。
具体的な調査結果があるわけではないものの、輸入高級車が事故に遭う確率は国産車より低いのは間違いない。
加えてとりわけメンツを重要視する韓国人にとって、高級輸入車は格好のツールだ。
韓国では優位な立場の人を「甲」、弱い人を「乙」と呼ぶ。所有している自動車のランクによって他者からの扱いが変わるのも、この「甲乙」のわかりやすい例だ。