韓国LCC国際線の4割を占めた日本路線
14年に約7万だった韓国LCCの日韓路線の便数は、18年には12万超まで拡大、訪日韓国人は3倍増の750万人にふくれあがり、日本路線は韓国LCCの国際線全体の40%を占めるに至った。韓国LCCは、成田空港や関空国際空港など日本の主要空港はもちろん、地方空港にも就航するなど拡大を続けたが、19年第2四半期に赤字へ転落した。ウォン安と燃料費の高騰が重なったからだ。地方路線を中心に赤字が目立ち始めるなか、各社はこぞって割引・特価イベントを敢行した。日本と韓国を燃料代込み1万円以下で往復できる航空券が常態化し、30万ウォン(約2万7700円)をギリギリ切る価格で日韓路線50日間乗り放題という常軌を逸したキャンペーンを実施したLCCもある。
韓国では有給休暇の取得が義務付けられており、多くの会社員が7月後半から8月に1週間程度の有給休暇を取る。また9月中旬には秋夕と呼ばれる旧暦の盆の連休も控えており、7月から9月の第3四半期は稼ぎ時だ。赤字が拡大してもそこで挽回できると見込んで、日韓路線に強い航空会社であることをアピールする意味合いもあって同時に大幅な値引きをしたが、やってくるはずの儲け時はとうとう来なかった。
不買運動が始まった時点で、すでに夏休みの訪日観光を申し込んでいた人々のキャンセルはほとんど見られなかったが、新規の申し込みが激減し、破綻への道を歩み始めたのがイースター航空だった。
イースター航空は07年の設立以来、経営的に低空飛行を続けていたが、ウォン高と海外旅行ブームが重なった16年から3年連続で黒字を計上。拡大のためシンガポール路線に投じるべくボーイング737MAXを導入したが、その直後に同機種の墜落事故などが相次いだせいで米連邦航空局やEUが運航を禁止し、リース費用が嵩んでいった。
さらに19年第2四半期には前述の通りウォン安と燃料代の高騰、過当競争で業績が悪化し、7月から広がったノー・ジャパン運動の影響で頼みの綱だった日韓路線の利用者が激減し、全従業員を対象に無給休職を実施するに至る。
同社は日韓路線の依存度が高く、同年12月、済州航空への売却が決まったが、新型コロナウイルスが拡散しはじめた20年3月以降、全路線で運航を中断した。同じく、ノー・ジャパンと新型コロナのダブルパンチに見舞われた済州航空が買収を取り止めると発表し、事実上の破綻に陥った。