2019年7月、日本から韓国への半導体輸出規制強化をきっかけに、韓国内でノー・ジャパン(日本製品不買)運動に火がついた。しかし、その影響は図らずも韓国国内企業の業績にも及ぶこととなる。例えばイースター航空は、不買運動によって訪日観光の新規申し込みが激減したことが一因となり倒産した。一方で、ユニクロや任天堂、トヨタ、ホンダといった日本企業の製品はノー・ジャパン展開後も購入され続けているという実態もある。はたしてノー・ジャパンにはどのような意味があったのか。

 ここでは広告プランナー兼コピーライターの佐々木和義氏の著書『日本依存から脱却できない韓国』(新潮社)より一部を抜粋。ノー・ジャパンが招いたさまざまな影響について紹介する。(全2回の1回目/後編を読む)

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ノー・ジャパン+コロナで航空会社が破綻へ

 韓国社会は様々な面で日本に深く依存している。例えば旅行関連の企業、従業員らは、不買運動によって最大の被害を受けた人たちであり業界だった。

 たとえば航空業界。フラッグ・キャリアの大韓航空は無給休職を実施し、108人いた役員を79人に削減した後、希望退職者を募集。対象は勤続15年以上、かつ50歳以上の一般職と客室乗務員で、運航乗務員や技術研究職、国外勤務者等は除外した。法定退職金に最大24カ月の賃金相当分を上積みして、退職後も最長4年間は子女の高校や大学資金を支援する内容だった。最大の被害を被った業界でも、そこはフラッグ・キャリアということもあり、割と厚めの待遇が用意されていたと言えるだろう。

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 それとは逆に、格安航空会社(LCC)の場合は大手と比較できないほどに深刻だった。LCC各社は05年頃から収益性の高い国際線を強化した結果、航空運賃の低価格化が進んだ。LCCは乱立し、それと相前後して、年間1000万人から1300万人で推移してきた観光目的の韓国人出国者は18年には2800万人を突破する。

 その一方で韓国を訪れる中国人が増加すると、各社はさらに国際線を強化。業界1位の済州航空が16年には26機だった保有機材を19年には44機に、11機を運航していたジンエアーは19機まで、それぞれ増強した。韓国LCC6社の保有機材は14年の66機から19年には150機に拡大する。17年、在韓米軍の基地に終末高高度防衛ミサイル(THAAD)が配備されると、中国政府は報復措置として韓国への団体旅行を禁止。訪韓中国人が激減したことで、各社は日本路線へのシフトを余儀なくされた。

 LCCの場合、長距離路線の運航は物理的に難しく、運航エリアはアジアに限られる。その中で日本は路線開設の自由度が高く、収益性が最も高い。

 日韓路線は距離が短く、飛行時間あたりのコストが小さい。加えて、日本人は時間を守るので、遅延が少なくオンタイム率が高くなるし、日本人は座席を汚すことがほとんどない。つまり、日本の空港に到着してから出発するまでの折り返し時間を短くできるので、1機が1日に往復する便数を多く設定できるわけだ。さらに機内販売品の購入額が大きく、預け入れ荷物の超過料金などについて、東南アジアや中国と比べて高く設定できるメリットもある。