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電気自動車を推進するも、充電インフラの不足により失敗

 ある企業が経費削減のために社用車のランクを落としたところ、普段利用するホテルの対応も比例して悪くなったという話も聞いたことがある。高級車は安全でステータスを自慢できる反面、維持費も高い。性能より見た目を重視する韓国人は、維持費を少しでも抑えるため、燃料費が安いディーゼル車をおおむね選択してきた。

 メルセデス・ベンツやBMW、アウディといった欧州自動車メーカーが韓国市場にディーゼル車を投入、ディーゼル乗用車をラインナップしていない日本車は苦戦していた。そんななか、17年5月に誕生した文政権は環境対策車の推進を公約に掲げたことで、レクサスとトヨタの売り上げは伸長した。微細塵(ミセモンジ)と呼ばれるPM10やPM2.5が問題視され始めたのに政府は対策を取ることはなく放置を続けた結果、事態はさらに深刻となり、ディーゼル車の規制を余儀なくされた。

 文政権は17年時点で2万5000台ほどだった電気自動車を22年までに43万台に一気に増やすという計画を立て、電気自動車を購入する際に政府が最大900万ウォンを、自治体も450万ウォンから最大1100万ウォンをそれぞれ支援する体制を整えた。また、一部の自治体はディーゼル車を廃車にする費用を負担することも検討したが、消費者は電気自動車への充電インフラを心配した。

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 韓国は国民の大半が集合住宅に居住しており、なかでも大気汚染が深刻な首都圏は集合住宅の割合が極めて高い。しかし、充電設備があるマンションはほとんどなく、自宅で充電できないとなれば消費者はハイブリッド車に手を出さざるを得ない。政府が志向した環境対策が裏切られたのである。

 韓国で販売されているハイブリッド車は、レクサス、トヨタ、ホンダ、現代の4ブランドで、高級車ブランドはレクサスしかない。またハイブリッド技術は日本が最高水準だという認識が定着している。加えてトヨタ、ホンダ、そして現代は、同クラスなら価格差がほとんどない。したがって高級車を求める人はレクサスを購入し、レクサスを買えない人たちはトヨタやホンダを選んだ。

 さらに電気自動車の相次ぐ火災もトヨタを後押しした。現代は政府が公約に掲げた電気自動車の開発に取り組み、18年、コナ・エレクトリックを発売したが、20年9月までに韓国で9件、韓国外で4件の火災事故が起こっている。国内販売2万5000台余と海外販売約5万1000台分の自主的なリコールの検討を始めた矢先の20年10月にも、京畿道南楊州市で充電中の車両に火災が発生した。

 結果として、「独島(日本名:竹島)は韓国の領土」と書いた横断幕を、あろうことかプリウスに掲げて街宣する反日活動家も現れたのは、このような事情があったからだ。