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「娘が自殺したのは、私のせいなんです」母親の突然の告白に、公認心理師が気づいた“家族関係の歪み”

カウンセリングとこころの深淵 中学生の自殺 #3

2022/02/10

genre : ニュース, 社会

note

(日記:自殺の2日前)
無理だとわかってもどうしても信じてしまう。

――嘘、無理だとわかっていても、というのは?

有希 1年くらい前から紗季に「お父さんと離れて2人で暮らそう」と言われていたんです。「うん、そうするね」って、そう答えていました。

――離婚すれば、もう母親が酷い目に遭うのを見なくても済む。それしかないって考えていたんですね。

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有希 離婚するなんて真剣には考えられなくて……、ただ「うん」って……。

私がもっと早くになんとかしていれば…

――紗季さんは、お母さんの言葉が本物ではないと悟りながらも、もしかしたら2人で平和に暮らせるかもっていう願いを完全には拭えなかった……。

(日記:自殺の前日)
無理なら、誰か私の感情消して!
お願いだから逃げさせて。

(日記:自殺の当日)
ずーーっと大好きでいたいから、バイバイ。

――このままだと、口先だけのお母さんのことを嫌いだという気持ちが出てきてしまう。どうしてもお母さんのことを好きでいたかったんですね……。

有希 ……はい。だからすべて私のせいなんです……。

――DVにさらされ続けていると、それが当たり前になってしまい、状況を変えられるという発想すら奪われてしまうんですよ。

有希 でも、私がもっと早くになんとかしていれば……。

©iStock.com

家族関係の歪みは世代を超えて受け継がれやすい

――残念ながら、なんとかできるような単純な問題ではなかった……。あのぉ、お母さんが子どもの頃、両親はいかがでしたか?

有希 あ……。そういえば同じでした。

――妻は夫から暴力・暴言を浴び、それに耐えるものだという刷り込みは、既に子どもの頃に作られてしまっていたのですね。

有希 あーーーー!

――あの頃、思ったことがあるのでは? あんな父親と離れればいいのに、って。

有希 はい……。

 面前DVという心理的虐待を含め、家族関係の歪みは世代を超えて受け継がれやすいことが指摘されています。

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