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撃鉄を起こしたけん銃「私の方に向けて来たのです」

《それを両手で構えて私の方に向けて来たのです。E行動隊長は撃鉄をおこしていました。つまりいつでも発射できる状態で、2ミリか3ミリ引き金を引けば撃てる状態でした。もちろん引き金には指がかかっていました。私は迷わず飛びかかりました。一か八かです。すぐ撃鉄のあいだに左手の親指をはさみ、引き金を引いても発射できなくしました。そして銃を取り上げようと、銃身をつかみ、E行動隊長の方に向け、ひねりましたが、E行動隊長も銃身をつかみ抵抗しました。そしてもみ合い、10分から15分銃の取り合いをしました。手をはなせば殺されると思いましたし、E行動隊長もそう思ったでしょう。コルトガバメントは45口径もあるので、ひとたまりもありません。双方手をはなさないので、弾の入ったマガジンを取ろうと思い、そこで私はE行動隊長に話しかけました。

 

「隊長、発射できなくするからね、マガジン取るよ、いいね!」

 

 と、声をかけました。E行動隊長は、「うん、うん」と、うなずいていました。マガジンとは弾丸が入っている弾倉のことです。リリースボタンを押してマガジンを取りました。次に「銃身をスライドさせるよ、いいね!」と声をかけて、銃身をスライドさせて、チャンバー、つまり弾丸が入っている薬室のことで、この中に弾丸がのこっていれば、引き金を引けば発射されます。スライドをいきおいよく引き、薬室にのこっていた弾丸を取りのぞきました。これで弾丸は発射できなくなりました》

当時の前橋スナック ©️共同通信

 この一件の直後、前橋に来た矢野と会った小日向は、襲撃からおりたいと申し出る。矢野に対して、不満はあっても口に出せないことが続いていたが、はっきりと自分の意志を伝えた。

《「あんな人と一緒にできません。自分を外してください」とお願いしたのです。ところが矢野会長は、「ダメだ」と言って、「山本にするか、どうだ」と言って結局、E行動隊長を山本健太郎さん(仮名・山田健一郎死刑囚のこと)に交代させることに決めてしまったのです。私は何度も、「隊長じゃなく、自分を外して下さい」「一から十まで全部私にやらせるつもりじゃないでしょうね?と言ったらそんなことはさせない大丈夫だと言ってたじゃないですか、約束がちがうんじゃないですか」と懇願したのですが、矢野会長に、「これ以上オレを困らせるんじゃねえ」とすごまれ、これ以上言ったら石塚組長(別の襲撃事件の実行犯だったが、トラブルから矢野に殺害された)の二の舞になる……と思い、それ以上何も言うことができなくなりました》

 そしていよいよ小日向は、『前橋スナック銃乱射事件』の日を迎えることになる。(#4に続く)

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