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「仲間がコルトガバメントの撃鉄を起こして銃口を向けてきた」前橋スナック銃乱射事件の前夜に起きた“ある事件”《元“武闘派ヤクザ”小日向死刑囚の獄中手記》

前橋スナック銃乱射事件#3

genre : ニュース, 社会

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ついに前橋スナックでの襲撃が決定

 結局、キャバクラでの襲撃は実行されなかった。しかし群馬県前橋市のスナックでの襲撃が決定。2003年1月、矢野の指示で小日向は矢野睦会のE行動隊長とともに群馬に向かった。

《頭はズキズキ痛むし、鎖骨は折れて痛くて腕が上がらないのに、どうして私が駆り出されなければならないのか……。まだ元気なのはたくさんいるのに……。矢野会長をうらみました》

 E行動隊長と小日向は、吉岡町の2階建ての一戸建てのアジトを拠点に、スナックの下見などをして過ごした。

《アジトでの生活は、昼はカップラーメンを食べ、夜はいつGOサインが出るか、毎晩7時頃から夜中までピリピリしていました。矢野会長から「まだ動きはないからリラックスしてろ」などと関係の無い電話が入るたび、「きた!!」と、リラックスどころではなく、ピリピリが最高潮に達するのでした。そして夜中にまた電話が入り、「今日は動きなしだから寝てもいいぞ」などと電話で言われ、寝られる訳もなく、酒を飲んでまぎらわせ、それでも寝られず、睡眠剤をのんでやっとうとうと寝られる位のものでした。毎日夜になると何度も電話が入り、「後藤が店に入ったら連絡するから待機していろ」とか、「多分1人だろうから」とか、「きっちりとどめさせよ」などと指示がありました》

前橋スナック銃乱射のために潜伏していたアジトの周辺 ©️文藝春秋 撮影/上田康太郎

張り詰めた日々のなか、起こったある“事件”

 張り詰めた日々が数日続くなか、ある“事件”も発生した。

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《この日のE行動隊長は、口もきかずに私の方をジッと見つめてきたり、何かブツブツと独りごとを言ったりして、私が「どうしたんですか?」「何してんですか?」などと声をかけても何も返事がありませんでした。私の方もアジトに入ってからずっと緊張している状態が続いて、このようなE行動隊長の態度に頭にきてしまい、となりの部屋のリビングテーブルで、ごみを片付けたりしながら、「冗談じゃねえよ」などと小言を言ったりしていたのです》

 するとE行動隊長が、リビングに入ってきた。手には持ち込んだけん銃のうち、一番殺傷能力のあるコルトガバメントを持っていたという。

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