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指原莉乃さんの愛想笑いが示すのは

 2つ目のケースは、現在タレントでHKT48というアイドルグループに所属していた指原莉乃さんの笑顔についてです。アイドル時代の指原さんが写真集を出し、発売を記念して握手会が開かれていました。そのときの様子が某テレビ番組で放映されていました。

指原莉乃 ©文藝春秋

 指原さん:こんにちは。

 ファンA:今晩、握手会行きます。

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 指原さん:あ! 本当~待っているね~。

 ファンB:買い増ししたい。

 指原さん:本当! ありがと。嬉しい。がんばりまーす。

 終始、デュシェンヌ・スマイルの指原さん。「あ! 本当~待っているね~」と言い、ファンBに顔を向けた瞬間、笑顔が突然消えます。この笑顔の唐突な消失は、作られた笑顔の特徴です。本心からの笑顔の場合、消失まで時間がかかり、ゆっくりと顔から消えるので、ファンBの「買い増ししたい」と言うセリフに、指原さんは素敵なデュシェンヌ・スマイルでお礼を言います。しかし、「がんばりまーす」と返したとき、デュシェンヌ・スマイルの隙間から嫌悪の微表情が漏洩しました。

 このときの指原さんの心理は何でしょうか。まず、ファンAに対する愛想笑いについてですが、ネガティブなイメージを持たれる方がいるかも知れません。しかし、愛想笑いは礼儀であり、優しさの表れだと著者は思います。写真集を購入してくれ、握手会に参加するために時間を都合してくれたファンの方へ指原さんが示した、礼儀であり、優しさでしょう。

 続いて、ファンBへの返答中に表れた指原さんの嫌悪の表情についてです。ファンの方が写真集を買い増しする、それが嫌だ、と解釈するのは無理があります。

 指原さんの嫌悪の微表情は、「がんばりまーす」と言うポジティブなメッセージが発せられると同時に、生じています。嫌悪が抑制され、笑顔に混入する形で生じているのです。このとき、すでに彼女はアイドルグループの頂点におり、日々頑張っていたことは想像に難くありません。「頑張るのはつらいけど、まだまだ頑張ろう」と自分自身に言い聞かせ、同時に目の前のファンに決意表明しながらも、そのつらさが一瞬嫌悪として表れてしまった、そんな心理が推測できます。彼女は、まだ頑張れる、まだ頑張れると自分に言い聞かせながら、一歩一歩歩み続けて来たのでしょう。それが、今日の人気の所以なのかも知れません。

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