1ページ目から読む
2/4ページ目

現役を離れても観戦を続けた、勤勉で熱いカーリング愛

 その勤勉さとカーリング愛はロコ・ソラーレと通ずるものがある。現役を離れていた時期も、世界選手権やカナダ選手権、グランドスラムなどのビッグマッチを欠かさず観戦していた。カーリングに対するアンテナという意味では、歴代の解説陣でもトップクラスの感度を持っているのが彼女だ。

 もっとも本人には「勉強している」という意識はない。「真面目だね」と声をかけられて「え、だって、カーリング観るの面白いじゃないですか」と笑いながら、解説で訪れていた日本選手権の会場でメモを取りつつ自身の担当でない試合を観戦している。その姿は、関係者やメディアからしてみれば日常的な光景だった。

「私たちに声をかけるタイミングがとてもうまいので助かる」と藤澤は石崎に感謝する ©JMPA

 平昌五輪後もロコ・ソラーレとはつかずはなれずの距離にいた。2018年に平昌五輪と同じ会場で行われたパシフィック・アジア選手権(韓国・江陵)にもフィフスとして帯同する。藤澤がこの頃に石崎について「解説者としての目でもらったアドバイスが新しい視点で、とても的確だった」と語っていたことがあったが、本橋麻里が育成に重心を置いた妹分のロコ・ステラを結成し、さらには翌19年には第二子を授かったため、ロコ・ソラーレにはフィフスが必要だった。

ADVERTISEMENT

 具体的には明かしていないものの、吉田知那美らが「比喩とかでなく本当に1000回くらい告白した」と言っていたのもこの時期からだろう。

吉田知那美は「琴美ちゃんの客観的な目が欲しかった」とも ©JMPA

メンバーの熱烈ラブコールを受けて、ロコ・ソラーレに正式加入

 ただ、石崎本人は「光栄だけれど」とした上で「怖くもあった」と心境を吐露していたことがある。

「ロコ・ソラーレは世界のトップにいるチームで、あの4人で完結している部分がある。麻里が作ったチームだし、私がそこに入るのは異物なのではないか」

 世界選手権銀メダル、五輪銅メダル、ツアーランキングトップ5のグループに身を置くこと、あるいは伸び代を消してしまうのではないかという不安が常にあった。

 それでも「琴美ちゃんがいい!」と、ロコ・ソラーレのメンバーはラブコールを繰り返した。

「何度もオファーをくれた選手の気持ちが嬉しかったし、麻里とも話ができた。あとはこの4人の挑戦を見守れるのは楽しそうだなとも少し思いました」

 最後は熱意に押される形で2019/20シーズンから正式にロコ・ソラーレに加入する。そのシーズンインに藤澤が石崎の合流時に「驚いた」と明かしてくれた。

「カーリング選手って、選手や地域ごとに少しずつクセがあるんですよ。でも琴美ちゃんが私たちの投げ方に合わせてきてくれたんです。そういう気持ちは本当に嬉しいし頼もしい」