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コピー品を売るビジネスモデルの終焉

 教えてくれたのは、浅野さんの同僚の大象さん(ペンネーム)。盗版を販売している会社は、日本で単行本を買って全てスキャニングし、日本語セリフの部分を消し、中国語を入れて印刷しているのであろう。読者の皆さんは、このような現象を聞くと「またか」と思うかもしれないが、これは少し古いビジネスだ。今の中国では、著作権に関する取り締まりは厳しく、ここまで大っぴらに著作権者に無断でコピーして売る商売はもはやできない。書棚に置いてある漫画は、数年前に売られていたものだ。

 もちろん、「上に政策あれば下に対策あり」と呼ばれる中国だ。あらゆる抜け道を使って日本の漫画を無断転載し、ネットに公開している人はいる。だが、その方式は日本でも「漫画村」というサイトが問題となったように、広告収入が主体だ。漫画は客寄せのために、無料閲覧が原則となっている(これはこれで、もちろん問題だ)。コピーを市場において、対面で売る商売が成り立つ時代は、中国でも終わっている。

 職場にある漫画のほとんどは社員が買ってきた漫画だが、その一角にある浅野さんの本棚だけは、毛色が違っていた。日本の漫画があまりないのだ。中国やフランス、シンガポールなど、世界中の漫画が置かれている。

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「世界で日本の漫画だけが有名かというと、決してそうではありません。世界には面白い漫画がたくさんあります。日本人が知らないだけなのです」

物語の骨格からエンディングまで、1巻を読めば全てが分かる

 確かに、浅野さんが指摘したように、私も日本以外の漫画をほとんど読んだことがない。勝手に日本の漫画が世界一だと思い込み、他の国の漫画を探そうと思ったこともなかった。

 さらに、浅野さんの書棚をよく見てみると、不思議な現象を発見した。色々な漫画があるが、全て1巻しかないのだ。なぜなのか。

「税関の人に、日本から中国に持ってこられる漫画は200冊までと聞いて、悩んだ結果、全ての漫画の1巻だけを持ってきました。漫画は1巻にその全てが集約されています。物語の骨格からエンディングまで、1巻を読めば全てが分かるからです」

 浅野さんが所属する会社・鮮漫は、浙江省杭州に本社を置く。中国全土に支店を持つ、大手の総合エンタメ会社だ。北京支店には社員が5人ほどいて、朝から晩までひたすら漫画を描く。浅野さんはそのうちの一人だ。

 現在、中国で最も漫画が読まれているデバイスは、間違いなくスマホだ。 

 スマホにおける漫画は、そのほとんどが無料である。