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「もう日本企業の視察は受けたくない」中国企業が日本人の“深圳視察”を嫌悪した決定的理由

『架僑 中国を第二の故郷にした日本人』より #2

2022/03/02

genre : ニュース, 社会

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 中国の四字熟語で「入郷随俗」という言葉があるが、日本語で「郷に入っては郷に従え」という意味であり、外国に行ったらその国のやり方に合わせることは、日中に共通した概念なのである。

 さて、新年会で出会った日本の若者たちは、私のイメージを覆すほどエネルギッシュで、語学の才能にもあふれていた。テンセントでゲームを作っている20代の女性や、深圳で投資企業を立ち上げて数百億円の売り上げを誇る男性など、多種多彩だった。主人公を一人に絞って撮影するつもりだったが、魅力的な若者が多かったため、数人をピックアップし、番組史上初めての「群像劇」を描くことに決めた。

16兆円の中古市場で起業

「竹内さんは僕の憧れであり、目標です! いつか竹内さんを超えます!」

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 新年会を主催した30歳の吉川真人さんは、深圳の若者をまとめる学級委員長的な存在だ。その吉川さんが私に出会い頭に言ったのが、「いつか私を超えるインフルエンサーになる」という言葉だった。

「あれ? 吉川さんは面白い会社を立ち上げたビジネスマンと聞いてやって来たんだけど、インフルエンサーになりたいの? 起業家じゃないの?」

「そうです、僕は起業家です。だから目標は、自分の会社を大きくして、有名な日本人起業家としてインフルエンサーになりたいんです」

 吉川さんは深圳に移り住んで約2年。同志社大学在学中、北京に語学留学をしたが、卒業後はベトナムに渡り人材紹介の仕事をしていた。いきなり中国で働くよりも、チャイナプラスワンとして注目されていたベトナムをまず見てみたかったという。その後、ベトナムで3年働いた後、日本に帰ってフリーランスとして働いていたのだが、ある仕事がきっかけで深圳に出張した時に衝撃を受け、単身深圳に来たという。

中国の中古品市場をもっと開拓したい

 吉川さんは深圳で一体どんな会社を起業したのか。深圳市内のショッピングモールに行くと、そこはオシャレな新しいショッピングモールで、ユニクロやギャップなどの有名ファストファッション店をはじめ、若者に支持されるブランドが多数軒を連ねていた。ここに吉川さんの会社が運営する店舗があるという。

「ここがうちの店です。名前はmonobank。中古ブランド品の査定・買取・販売をしています。日本の会社からも出資を受けているんです。私はこの会社をきっかけに中国の中古品市場をもっと開拓したいと思っています」

 店には専門の中古品鑑定士が数人在籍しており、棚には中古のヴィトンやエルメスのカバン、財布がずらりと並んでいる。日本では大黒屋などで見るごく普通の店舗風景だが、私は珍しい光景だと思った。なぜなら、中国ではまだ中古ブランド品市場が成熟しておらず、こうした専門店は多くないからだ。経済発展中だった中国では、これまでは新品こそが価値のあるもので、中古品は貧乏人が買うダサい物という認識だった。そのため、日本で言う古着屋、リサイクルショップもほとんどなかったのだが、経済発展とともにそれが大きく変わろうとしている。