シャオミの宣伝みたいになってしまったが、吉川さんはこの体験店でシャオミの製品を見た時に「これからの中国は凄いことになる」と実感したという。おそらく1980年代、中国人がソニーやパナソニックの製品に初めて触れたのと同じような衝撃だったのだろう。シャオミに限らず中国の家電メーカーは、少し前までは「アメリカのパクリをして安く売っているだけ」と言われて来たが、今では実力がついて次々に独自の製品を開発している。
深圳には物凄いパワーがある
それはまさに、日本の家電メーカーが80年代にたどった道と全く同じではないか。当時、日本の家電メーカーも「アメリカの猿真似」だと罵られながら技術を高め、ついにはアメリカを凌ぐ製品を作り上げるようになった。今は中国がその立場になったということだ。だが、その現実をまだ受け入れられない人も日本にはいるようだ。
平成生まれの吉川さんのような日本の若者は、中国の凄いところを素直に認めることができる。少し大袈裟に言えば、私は吉川さんを見て、日本に希望を持つことができた。相手のよいところは素直に認めないと、中国に追いつけないからだ。
「深圳には物凄いパワーがあります。街を歩く人たちを見てください、みんな若いでしょう。ここはビジネスをする人しか集まって来ません。深圳は歴史も浅く、誇れる文化もあまりありませんが、『起業して金持ちになりたい』というパワーはどの街にも負けません」
今、中国は凄いぞ
確かに、約1700万の人口を持つ深圳の人々の平均年齢は33歳と若く、その多くは外地からやって来た人々で、深圳出身の人はほとんどいない。だからこそ、他の地域で見られる縁故主義はなく、実力のみが評価される。若い人だらけなので、新しい社会実験も反対する人が少なく、無人運転タクシーなどの新ビジネスも始めやすい。
吉川さんは深圳で見つけた面白いもの、最先端の技術などを毎日ツイッターで紹介し、現在は1万2000人以上のフォロワーを持つまでになった。新年会に集まった若者たちのほとんどが、彼のツイッターを通して知り合った仲間たちだという。
「僕はここで起業家として成功して、中国で一番有名な日本人起業家インフルエンサーになりたい。そうなれば、中国の面白い情報をどんどん発信して、日本人の意識を変えられる。起業し、成功してお金持ちになるのが目的ではありません。今、中国は凄いぞ、という現実を日本のみんなに伝えたいのです。そうすることで、私に続いて第2、第3の日本人起業家が深圳で生まれれば、面白いことになると思うのです」
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