経済至上主義という今の世の中のしわよせはどうなるのか
――昔と今では子どもの遊び方が変わりましたね。今では、ネットを見てゲームしている子が増えている。遊び方が昔と変わってきたことについては、どのように思われますか?
加古 いやだから、そりゃ、世の中の変化もありますよね。道路は車が走って危ないし、人さらいもいるかもしれないから、外へなんか遊びになかなか出せないという状況がある。だから、家の中で子どもを遊ばせている分にはいいや、ということかもしれません。だけど、経済至上主義という今の世の中が、子どもの世界にも影響する時代になってきた結果のしわよせはどうなるんでしょうか? 僕は「そんなのは間違いも甚だしい」と思うんだけれども、そこが矯正されなければ、時代が流れるままにいくでしょうねぇ。
だからそれはもう、時代をつくっている親、大人たちの責任であって、子どもの責任ではないと思っていますけどね。いつか、そのつけが負債となって来るかもしれません。理想的な子育ての時代っていうのはなかなか来ないのかもしれませんけれども、良き未来を目指さないといかん、ですよね。僕はもう年寄っているから、とてもそこまでの力はないんだけれども。
――そういった世の中で、加古さんがお描きになる絵本は、ある意味、希望だと思うんです。子どもたちが読んで吸収する力ってすごいので、いろいろ彼らなりに感じて考えて、成長していく。小さいときに絵本を読むことの素晴らしさ、大事さを受け継いでいきたいなというのは読者の1人として思います。
加古 その子どもさんですけどね、自分の判断で賢くなろうとか夢を実現しようとか、自分の道を歩んでいけばいいと思います。でも、戦争中の状況のように、大人が強制的に「こうしなさい」とがたがた言う必要はないんです。一見それが優れた道であってもね。優れた道なんていうのは、孔子さんを始め、今までたくさんの偉い人が示してくださったんだから。自分がそれを採用するかどうか、それを実践するかどうかが、はっきりいうと、各自の子ども自身の賢さによるわけです。だから、賢い子になりなさいよ、なってくれ、ということですよね。
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かこさとし(加古里子)
絵本作家、児童文化研究者。1926年福井県生まれ。東京大学工学部応用化学科卒。工学博士。技術士(化学)。大学卒業後は民間企業の研究所に勤務しながら、セツルメント活動に従事。子ども会で紙芝居や幻灯などの作品を作り、59年『だむのおじさんたち』で絵本作家の道へ。代表作に『からすのパンやさん』『だるまちゃんとてんぐちゃん』『どろぼうがっこう』など。『かわ』『海』『宇宙』などの科学絵本も多く手がけ、作品数は600点以上にのぼる。2008年菊池寛賞、2009年日本化学会より特別功労賞受賞。福井県越前市に「かこさとし ふるさと絵本館『らく(実際の表記はは漢字)』」がある。
かこさとし公式ホームページ http://kakosatoshi.jp/
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