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「会いたくて震える」活動期間は約10年…西野カナ“着うたの女王”の歌詞が平成後期に支持されたワケ

2022/02/27

 スマホの進化が止まらない。今や買い物の支払いも確定申告もこれ一つでできる。凄いと思うと同時に、こんな小さな長方形に全生活寄りかかっている自分が怖い!

 考えてみれば、携帯電話が一般普及してまだ30年ほどしか経っていない。1991年のドラマ「東京ラブストーリー」では、赤名リカ(鈴木保奈美)がものすごく大きい携帯電話を使っていて、「こんなの流行るわけがない」と思っていた。あのときの私に言いたい。流行る流行る。それどころか、生活必需品になるよ……。

 簡単に情報や知識が入ってくるのは本当に便利。でも記憶力や対面でのコミュニケーション・スキルなど、失ったものも数知れず。待ち合わせのすれ違いはなくなったが、ストレスは決して減らない。「既読がつかねぇ~! 無視か? 私なんかしたっけ」「このスタンプの意味どう取ればいいの?」とモヤモヤ。思い込みによる精神的すれ違いは逆に増えている気がする! そんなことに気付かせてくれるのが、西野カナの楽曲である。

自己評価の低い“妄想女子”が歌詞の主人公

 西野カナがデビューしたのは2008年。奇しくもiPhoneが日本に初上陸したのと同じ年だ。2010年に「会いたくて 会いたくて」が大ヒットし、その後「着うたの女王」として名を馳せることになる。この歌のサビは、平成後期を代表する名サビではなかろうか。「会いたくて」というワードを見るだけで、自然と「会いたくて震える……」と歌ってしまう人が続出した。

西野カナ ©getty

 改めて西野カナの楽曲を聞いてみると、意外なことに歌詞の主人公の多くが妄想女子だ。MVや歌声がとてもポップでキラキラしているので、てっきり恋多きリア充女子の世界と思っていたが、逆だった。全体的に「こんな私でも幸せになれるかな」という低い目線。幸せを夢見るけれど、自信はない。どこかで「無理かも」という感情が見える。「もっと自信を持ってええねんで……」と言いたくなるほどである。

 例えば、オルゴールのようなイントロがとてもかわいい26th「もしも運命の人がいるのなら」(2015年)。運命の人がいるのかな、こんな人がいいな、とウキウキ考える歌である。しかし「好きな人に好かれないし いいなと思った人には恋人がいるわ」という切ない恋愛体質が挟まれる。きっと「横にいたのに気づかなかった 運命の人はあなただった」というオチがつくのだろうと思いきや、「運命の人待ちくたびれ~!」という状態で終わる……。

 28th「あなたの好きなところ」(2016年)も、恋人の好きなところを挙げていく歌だが、とにかく細かすぎてヒヤヒヤする。多分これは心のメモで、彼女が恋人に伝えられるのは「あなたでよかった だって面白いもん」の一言だけだったりするのかも。