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――「スエヒロ」の店主の味は?
小森谷:同じ六文そばグループだったから会ったことはあると思うけど、あまり鮮明な記憶はないんだ。でも「スエヒロ」の味は「六文そば」がルーツだからだいたいわかってたよ。それですぐ再現できると思ったよ。だから、俺が呼ばれたんだと思うけどね。
登場した「げそ天ピーマン天そば」のつゆをひとくち。濃いめの出汁の深い味わいが広がる。黒く金色の模様の入ったどんぶりは昔のままである。そばは「一由そば」と同じ興和物産の茹で麺である。げそ天の形状は「一由そば」とは異なる、げその足が跳ねるような「スエヒロ」タイプである。
げそ天だけでなく、いんげん天、紅しょうが天などの人気天種もちゃんとある。カレーライスやいなりも同じ作り方である。「そばのスエヒロ八丁堀店」の味を十分に再現できていると思う。
“ミスター立ち食いそば”のリタイア後の人生は…
小森谷さんは「一由そば」を離れてから、英会話教室、三味線の勉強、高齢者向けの体操指導員、絵本の読み聞かせの仕事など、リタイア人生後の人生とは思えない活動的な生活を送ってきたそうだ。
――もう一度そばの世界に入ることに抵抗は?
小森谷:抵抗はあまりなかったよ。なるべく普段はそばのことは考えないようにしていたんだ。そばの話をすると、すぐに店に行きたくなっちゃうからね(笑)。そばバカとでもいえばいいのかな。もう動きが沁みついているからね。カミさんは心配しているかもしれないけど。まあ、やってみないとわからないね。でも英語も随分勉強したし、三味線もやってた。いろいろやっていたので、それをやめるのはちょっともったいないというか残念でしかたがないよ。