「お客さんが増えれば、お店も繁盛して廃油の回収量も増える。そうしたら、うちはBDFでトラックをたくさん走らせることができて、地球にも優しくなる。運送業を始めて今年で55年、みなさんのおかげでここまでやってこれたのだから、今度は私がみなさんにその恩を返す番なんです」
燃料を循環させながら、自分の受けた恩も世の中に循環させる西田会長。その発想がSDGsの取り組む原点になっているのかもしれない。
自治体からも回収依頼、石油元売り会社からもオファー
福岡県内の自治体からは、家庭内の廃油の回収の依頼が相次いでいる。化石燃料の使用の落ち込みが予想される石油元売会社からも相談を受け、大手のタクシー会社からもオファーが届く。
西田商運の運送業自体の売上も好調だ。SDGsで注目を集める西田商運と仕事をすれば、それだけで脱炭素に取り組んでいることがアピールできる。BDFの製造に取り組む真摯な姿勢がメディアで注目されたことで、「こういう運送会社に仕事をお願いしたい」と新たな取引先からの問い合わせも増えている。
「何歳までお仕事をされるんですか?」「棺桶に入る前日まで」
西田商運は年度内に、同じ市内のさらに広い敷地に社屋を移転する予定である。1万5000坪の敷地内には最新式のプラントを作り、BDFは現在の3倍まで増産できるようになる。
「今は仕事が楽しくてしょうがない」と話す西田会長。74歳という年齢にも関わらず、器用にタブレットを使いこなしながらBDFの説明をし、取材に応じながら従業員に対しても仕事の指示をテキパキと出す。そのアグレッシブな姿は現役バリバリの経営者だ。
取材の最後に「何歳までお仕事をされるんですか?」と聞いたところ、間髪入れずに「棺桶に入る前日まで」と笑いながら答えてくれた。
「100歳までと思っていたけど、長生きしたらまだまだ楽しい仕事ができそうだからね」
西田商運のBDFの快進撃は、しばらく続きそうである。