「議員会館に液晶タブレットを持ち込む最初の議員になるかもしれませんね(笑)」
――紙で単行本を出してもらえない作家にとっては、電子版を劣化なくコピーされるのは死活問題です。
赤松 紙でも売れるようなごく一部の“超・人気作品”が売り上げを牽引していますが、業界にはまだまだ電子版でしか読めない新人作家が多くいます。
そこから次の大ヒット作が生まれているのに、そうした「電子オンリーのマンガ家」は電子の海賊版サイトによって文字通り大打撃を受けてしまいます。これだけマンガが大盛況の時代に、食いっぱぐれる作家が出てはならないと思います。
あと私がつねづね言っているのは、マンガやアニメを使って外交することですね。自衛隊がイラクのサマーワに派遣されたとき、給水車に『キャプテン翼』の絵が描かれていると攻撃されない、なんて噂がありましたけど、外務省に聞いたら事実だったんですよ。
――『キャプテン・マージド』(『キャプテン翼』のアラビア語版)はアラブ諸国で大人気です。
赤松 昨年の東京五輪の開会式でも、各国の入場プラカードにマンガのフキダシを使っていたのは記憶にあたらしいところだと思います。
また、来日したフランスのマクロン大統領は、大友克洋先生(『AKIRA』『童夢』など)や真島ヒロ先生(『RAVE』『FAIRY TAIL』など)に会って大喜びでした。更に、日本にあまりいい感情を持っていない国であっても、『エヴァンゲリオン』は大好きだったりします。
こうしたことを見ても、海外から見れば、やっぱり日本は「アニメの国」であり「マンガの国」なんですよね。だから、マンガ家自身が日本のウリ(=アニメ、マンガ)を持っていって宣伝すれば、日本の良さを分かってもらいやすいはずです。いうなれば「作者の顔が見えるマンガ外交・アニメ友好」ですね。
その過程において、現状ではポリティカル・コレクトネスと相容れない日本アニメ・マンガの多様性や面白さを伝えられたり、新しい商業的なチャンスが生まれると思います。
そのためには海賊版は撲滅しなければなりませんし、エビデンスのない表現規制も認めるわけにはいきませんね。
――夏には選挙が控えています。マンガ家の出馬に前例がない以上、どこからが公選法の事前活動になるのか、手探りでは?
赤松 そこは弁護士に相談しながらやっています。やっぱり私の武器はマンガですから、マンガを使っていきたいですね。
難しい政治用語や政策も、かわいいキャラクターやカッコいいキャラクターがカラーのマンガで説明してくれたら、動画を見る時間がない人でも「見てもいいかな」と思うはずです。もし私が当選したら、議員会館に液晶タブレットを持ち込む最初の議員になるかもしれませんね(笑)。
写真=佐藤亘/文藝春秋