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――「頬を赤らめている」とか「服の皺が多い」イラストを「過度に性的に強調されているから不適切」と言われていることも目にしますが、そのような方針で創作物を規制するのはよくない、ということでしょうか。

赤松 先述した児ポ法(児童ポルノ禁止法)と同様に、実在の女性や児童の権利を守ることに対しては賛同していますが、科学的な根拠も法的な根拠もない、感情論による行きすぎた表現規制には断固反対します。

「『セーラームーン』を読んで『作者は白人に憧れている!』と思いますか?」

――これまで「性描写」や「残酷描写」の観点からマンガを規制しようという動きが主でしたが、ジェンダーの観点から創作物を規制しようとする動きがあらたに出てきた、と。

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赤松 国連の女子差別撤廃委員会等、海外からの圧力も強まっています。また、いわゆる「ポリティカル・コレクトネス」の観点からの規制の動きもあります。黒人のキャラクターの声は黒人に担当させる、みたいな話は聞いたことがありませんか?

 

――アメリカの長寿アニメ『シンプソンズ』は、プロデューサーが「白人が担当した非白人キャラクターの声は、すべて入れ替える」と声明を出しました。

赤松 日本のアニメでは、少年役に女性声優が声を当てることは、よくある手法です。『魔法先生ネギま!』の主役・ネギくん(少年)の声も、女性声優さんが演じてくれました。

 海外では人種やジェンダーが非常に大きな問題になっているのは分かりますが、だからといって日本でも全く同じような価値観で配役しろ、という圧力は受け入れるべきではありません。日本では、性別や人種ではなく、「声優としての実力」で勝負できるようであってほしいのです。

 いずれ日本マンガや日本アニメにも「登場人物の男女を同数に」だとか、「さまざまな国籍、宗派、人種を登場させろ」だとか「男性キャラクターは男性声優が担当すべき」だとか言われるのだとは思いますが、そこは抵抗すべきです。

――登場人物の人種構成に関しては、海外の広告や実写映画だと、その傾向が顕著になってきました。

赤松 たとえば『美少女戦士セーラームーン』の月野うさぎちゃんは金色の髪で描かれますし、『ラブひな』の成瀬川なるの髪色はスクリーントーン51番(※編集部注・グレー)です。こういった髪色を見て、我々日本人は、彼女たちを「欧米系の女性」と感じますか?

 

――そう感じる人は少ないと思います。たくさん登場するキャラクターを区別するための手法であり、いわば記号的な表現です。

赤松 そうです。日本人のように全国民がマンガやアニメに親しんでいると、それが常識です。

 しかし、海外にはそれがわからない人もたくさんいる。そういう人たちからすれば、マンガやアニメであっても登場人物は人種構成や男女比が考慮されるべきであり、また女性が色っぽいものとして描かれてはいけない……となる。「男女平等のために表現規制をしましょう」と目的が大きくなったとたんに、一気にガタガタと規制へと転じていくことが危惧されます。

 いっぽうで自民党にはいま、少なくとも「マンガやアニメを規制しよう!」という動きはありません。