『天才バカボン』や『もーれつア太郎』など数々の名作を世に送り出し、“ギャグ漫画の王様”と呼ばれた故・赤塚不二夫。その赤塚不二夫の名作漫画、『おそ松くん』と『ひみつのアッコちゃん』が今年で連載開始60周年を迎える。
主人公の6つ子たちとイヤミやチビ太など個性的なキャラクターが繰り広げるドタバタな日常を描いたギャグ漫画『おそ松くん』。普通の小学生だったアッコちゃんが“魔法の鏡”を使って様々な人や動物に変身する少女漫画『ひみつのアッコちゃん』。今でも多くの人に愛される名作漫画はどのようにして誕生したのか――。
赤塚不二夫のひとり娘であり、現在は株式会社フジオ・プロダクションの代表取締役社長でもある赤塚りえ子氏に赤塚作品の誕生秘話や知られざる親子関係について話を聞いた。(全2回の1回目。続きを読む)
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『おそ松くん』が6つ子の兄弟になった理由は…
――2022年で『おそ松くん』と『ひみつのアッコちゃん』が連載開始60周年迎えます。率直に今のお気持ちはいかがですか。
赤塚 すごく嬉しいですね。60年前に描かれた作品を今でも読んでくださって本当にありがたいです。どちらの漫画もキャラクターの個性が強いですし、読み飽きない作品だなと思います。
――まずは『おそ松くん』について伺いたいと思います。『おそ松くん』は、6つ子の兄弟が主人公のギャグ漫画ですが、そもそも6つ子にしようという発想はどこから生まれたのでしょうか。
赤塚 当初、『おそ松くん』は4回だけの短期連載ということでお話をいただいたんですね。当時の父と母にとっては念願の週刊少年漫画誌での連載でしたので、「どうせ4回で終わるなら誰も描いたことがない、ものすごい面白いものにしよう」と燃えていたそうなんです。父が「主人公は双子かなー、3つ子かなー」と考えていたところ、アシスタントをしていた母が「いっそ6人にしちゃえば」と。
実は父も母も昔から映画が好きでよく観ていたのですが、そのなかでも1950年に公開された『1ダースなら安くなる』というアメリカ映画が好きだったんですね。映画では12人の子どもたちが登場するのですが、そこからヒントを得て、「主人公は1ダース(12人)にしちゃおう」と。でもさすがに12人は1コマに入らないので、半分の6人にしようということで6つ子になったそうです。