取材中に勃発したスタッフ間の議論
セリカについて話を聞いていると、何やら車両の周りに担当者たちが集まり、切迫した様子で話し合っている。ダッシュボードの端に小さなヒビが見つかり、その対応をめぐって議論が勃発したのだ。「パテじゃダメ?」「ここにシート貼って……」「いや、それじゃ質感が……」矢継ぎ早に言葉が交わされ、現場に緊張が走る。
次々に今後の対応策が検討されるなか、話に取り残された我々は、恐る恐る事態について説明を求めてみる。
「ダッシュボードにはもともと大きなヒビが入っており、オートサロンに出展した時にはここにカッティングシートを貼っていたのですが、質感が元のイメージと変わってしまい、来場者の方から指摘されることもありました。
これは別のダッシュボードを再度手に入れて、リフレッシュしたうえで組み付けたのですが、そこで広がった拍子にヒビが入ってしまい……修復すると風合いが変わってしまうので、これからどうしようかというところですね」(同前)
旧車のレストアを進めるなかで、後から新たな懸念点が浮かび上がってくることは珍しくない。気になる点が出てくるごとに、工法や仕上がりへの影響、コストやスケジュール等々をふまえ、メンバー間で対応策を探っていくわけである。
カスタム仕様のスープラ
次に案内されたのは、馬力や排気ガスなどを測定するシャシーダイナモの工程である。地を這うようなスープラの黒いボディが、計測用のローラー上に載せられている。テストコースでの実走行に向け、車両状態の最終的な確認をしているところだ。
このスープラは1992年式であり、現状のラインナップにおいてはもっとも新しいモデルである。搭載されるエンジンは2006年まで生産されていた型であり、マニアたちの間でも耐久性に定評がある。
「エンジンはバラせる状態までには持っていっていますが、深いところまでは手を入れず、現状で問題のある箇所だけをリフレッシュしています。部品調達の難しさなども考慮しながら、ターボと吸気を中心にリフレッシュし、ピストンやブロックなんかはそのままですね」(同前)
リフレッシュにあたっては、社外品も積極的に採用している。なるべく多くのユーザーに、手の届く価格で貸し出すうえではコストを抑えることもポイントだった。
「この型のスープラは、トヨタの方でヘリテージパーツを扱っているんですが、量産を前提にしないパーツはやはりコストが嵩みます。旧車の場合、純正品よりも社外品の方が安く抑えられることもあり、極力一般に流通している部品で作っていこうというのがありました」(同前)