「この車はツートンカラーになっていますが、実車を見ずに見切り線を決めるのが大変でした。写真などの資料を参考にしながら、『ここはあと数ミリさげようかな』と調整していく形です」(同前)
しばしば途方もない作業量が要求される鈑金塗装だが、作業担当者は「自分の手を汚して、直接車に触れるのが好きなので」と屈託なく答えた。
全バラシされたエンジン
最後に案内された作業場には、先のMR2のエンジンが分解された状態で並べられていた。
「この車両はおそらく、最後のオーナーが部品を売ってから手放したようで、インジェクターとかエキマニとか、足りていない部品がかなりあるんですね。分解して不足した部品のリストは揃っている状態で、これからどうやって手に入れるか、というところです」(前出・トヨタ担当者)
自走できる車であれば、実際の走行チェックで問題を把握しやすいが、自走不可の状態では現状把握のためにまず分解調査が必要になる。一つひとつの部品を確認しながら、溜まった煤などを落とし、摩耗や傷の状態を細かに見ていく。
「バラしてみてダメなものはすぐ替えればいいかというと、そうもいきません。この車のように部品がなかなか市場に出にくい車種ではとくに、『バラしたけど部品がない』という可能性もありますので、調達方法やコストの面での見極めも重要になります」
部品を一から作るにしても、製造コストが膨れ上がれば貸し出し価格にも影響が出てしまう。メーカーだからといって、生産を終えた車両の部品を自由に手に入れられるわけではなく、部品調達という課題は残るわけである。
トヨタ自動車の電動パワトレ開発統括部によるレストアは、とくにエンジン周りにおいて「メーカーならではの強み」が活かされ、レンタル車種は往年の出力を取り戻している。一方で、鈑金塗装など若いチームにとってのチャレンジとなる部分も大きく、そのぶん吸収力やエネルギーが武器となる場面もあったと言えそうだ。セリカやスープラの走りとともに、MR2の登場にも期待したい。(#3に続く)
記事内で紹介できなかった写真が多数ございます。こちらよりぜひご覧ください。