話を聞きながら、ボディ形状が「エアロトップ」と呼ばれるものであることに気づく。屋根が開くのである。無遠慮に「開けてもらえますか?」と聞くと快諾してくれ、専用の工具を用いてルーフが外され、リアのラゲージルームに収められた。2人がかりで5分ほど時間を要し、手を煩わせてしまったことを申し訳なく感じる。
「これはエアロトップにこだわって買ってきたんですよ。自分で持っているとなかなか外さなかったりするので、実際に買うならクローズドボディという方が多いのですが、借りるならこっちの方がいいかなっていうのがありました」(同前)
たしかに「オープンカーに一度は乗ってみたい」という需要は多いが、自分で維持するにはハードルが高い。旧車となればなおさらであり、スープラはそうしたニーズにも応えることになるだろう。
「こんなものほんとに買ってきたのかよ……」
次の作業場には、リフトアップされたドンガラ状態のボディが。鈑金塗装を終え、最終の磨き工程に入ったAW型MR2である。この車両は、レンタカーサービスの開始段階ではまだ導入の見込みが立っていない。
この車両は仕入れ時の状態がとくに悪く、ほとんど廃車寸前といった具合だったという。KINTO側の担当者は「最初に見た時、こんなものほんとに買ってきたのかよってくらい汚かったですよ」と語る。
「この車両の場合には、『なるべく市場価値がつかない廃車寸前の車両も出回らせていきたい』という思いもあり、あえてボロボロの状態のものを仕入れており、チャレンジ的な側面があります」(トヨタ担当者)
チャレンジを引き受けるのは、電動パワトレ開発統括部の有志メンバーである。もともと鈑金塗装を専門としているわけではないから、試行錯誤を繰り返しながらボディをリフレッシュしていった。とくに旧車の場合、鉄板の内部まで腐食が進んでいることも珍しくなく、しばしば気の遠くなるような作業が要求される。
「車の塗装には大きく上塗りと下塗りがありますが、レストアの際に古い塗装をどこまで剥がすのかというのは業者によって違います。この車では塗装をすべて剥がし、磨いてから塗っていったのですが、塗った後から古い下地の痕跡がブツになって出てきてしまう。そのたびまた磨いて塗り直す、ということを繰り返しました」(同前)
さらに、かつての修理箇所に問題があれば、そこを直すのにいっそう時間がかかってしまう。
「この車両では、クオーターのところに分厚くパテが盛られて塗装をやりなおした痕があり、それが痩せてしまって塗膜に凹凸が出ていました。極限まで削って鉄板までいくと、ぶつけて凹んだところがそのままになっていたんですね。それをまた鈑金で平らに直し、薄くパテを塗って表面を直す作業が必要でした」(トヨタ作業担当者)
加えて、作業を担当するチームには若いメンバーが多く、知らない世代の車を手掛ける際の苦労もあったという。