女性向けアダルトグッズは売れない、と言われていた。
アダルトグッズの営業をしている筆者が、アダルト業界に入ったのは2015年。当時、アダルトショップの顧客はほぼすべてが男性だった。中には、女性お断りのショップもあった。オナホール等、男性顧客をターゲットにした商品が売り上げの多くを占め、ローター、ディルドなど女性向け商品は売り場の端っこに少しあるだけ。
「女性をターゲットにしても失敗する」というのはアダルト業界の通説であり、2019年に出版した拙著『オナホ売りOLの日常』にも、女性向け商品が市場に受け入れられることが難しい旨を記した。これが業界の当たり前だと思っていた。しかし、ここ1年、潮目が変わってきている。女性向け商品が売れるようになってきているのだ。
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「女性が1人で来店するのは初めて見ましたよ!」
「ウーマナイザーないですか? ってよく聞かれるんですよね」
あるアダルトショップに伺った際、担当者は、「ウーマナイザー」の問い合わせが多いことを私に告げた。「ウーマナイザー」とは、ドイツ生まれの吸引型女性向けアダルトグッズ。女性器や乳首などを吸う動きで快感を与える「吸引ローター」の先駆け的存在だ。担当者によると、ある女性タレントが不倫相手とウーマナイザーを使っていたという報道後、問い合わせが爆発的に増えたという。
以前から、ウーマナイザーはアダルト業界内では有名だった。女性向け商品の中では売れゆきのいい商品だ。しかし、ショップのメインターゲットである男性向けではないことから、目立つ位置に置かれることはなく、アダルトショップで大ヒット商品となることはなかった。それが、前述した報道をきっかけに販売数が増えたというのだ。吸引ローターコーナーを新たに設けたという店舗もある。
繁華街にある某ショップでも、報道以降「ウーマナイザー」を求める客が増えたと話す。
「ニュースのせいか、問い合わせが多いですね。ほとんどは男性客です。プレーに使うのか、プレゼント用で買うのか、そんな感じだと思いますね。吸引ローターないですか? ではなく、ウーマナイザーないですか? と聞かれます」
女性用アダルトグッズであっても、店舗で買うのは男性といった傾向は以前からあった。しかし、昨今のウーマナイザーブームは、従来の男性客以外にも広まりつつあるのだ。
「女性が1人で来店するのは初めて見ましたよ!」
地方都市のアダルトショップに電話した際、発注担当者は驚いた様子で筆者に話していた。
「もちろん、数は少ないですけどね。僕が見たのは、2人ぐらいですかね。だけど、それまで女性のみのお客さんはいなかったので驚きました。男女のカップルで来店する人なら多少はいたけれど、それ以外で女性のお客さんはいなかったので……」