このアグレッサー(侵略者)どもとの戦いの取材にきたんだろ?
「このアグレッサー(侵略者)どもとの戦いの取材にきたんだろ? 俺は外科医だが昨日の砲撃はひどかった」
イゴールの同僚を名乗る外科医は頼みもせんのにスマフォの画面をこちらに向けた。そこには手足をもぎ取られた若い兵士の写真があった。
「どうした? 俺のことをトラックの運ちゃんかデリバリーボーイ(宅配の兄ちゃん)と思ってた顔だな。こう見えても現役の外科医だ。今は取引先だった企業や団体を回って資材を集めるボランティアだがな」
フォードはまだ続く爆発音の中をまた進み始めた。この次は侵略3日目にミサイル攻撃を受けたテレビ塔の下をとおり、とある倉庫群に入った。
そこで待ち受けていたロータリークラブのボランティアの男性に義足などの積み荷をさらに降ろした。
リビウを発って20時間、ようやく首都に到着
その後もフォードは郊外を回り、ドニエプル川を西側に渡りキエフにそびえる祖国の母像の麓の唯一開いてるかもしれんガス・ステーションで給油のため長い列に並んだ。
「金ならいらない」というイゴールに「これだけは」と燃料代だけは払わせてもらった。スタンドの店内にはこれまたイゴールの知り合いのボランティアの女性が客にドーナツやクッキーをふるまっていた。
ロシア軍が今も着々と首都の包囲を狭めようとするのが分かっていながら、こんな若い女性がその中に残りなんとか皆や国の役に立とうとボランティアを続けているのである。これはロシアはかつてない強敵を相手にしていることになる。
フォードが大統領府のすぐ近く、まさに首都の中心地のホテルにたどりついたのは午後3時、ちょうどホテルのチェックイン開始の時間をむかえた時であった。
夜の帳がおり始めたリビウを発って20時間が経っていた。ホテルはたまたま立ち寄ったら部屋があったから決めただけである。
イゴールたちはその後すぐに軽傷者や避難民をマットを敷いた荷物室に乗せリビウに帰っていった。
イゴールたちが無事リビウに到着したという知らせがキエフに届いたのはそのさらに20時間後だった。
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