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朝日の上がったウクライナの大地から突然黒煙が…深夜を20時間走行、首都キエフに辿り着いた日本人カメラマンが見た“女性ボランティアの献身”

朝日の上がったウクライナの大地から突然黒煙が…深夜を20時間走行、首都キエフに辿り着いた日本人カメラマンが見た“女性ボランティアの献身”

#9

2022/03/20
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最初の目的地についに到着

 なんちゅうてもウクライナには米軍はじめスウェーデン、オランダ、バルト三国などから赤外線追尾式「ジャベリン」ミサイルに「カールグスタフ」無反動砲などの西側最新式の対戦車武器が何千と提供されとるのである。

 ロシア戦車が首都に侵入しようとこの3車線道路に築かれたバリケードでのろのろしとる間に次々にジャベリンの餌食になるは確実であろう。フォードはロシア軍が迫るドニエプル川東岸にいったん渡り、再び郊外を縫うように進み、とある小学校前で止まった。

ドニエプル川東岸キーウ郊外早朝 まさに嵐の前の静けさ。ただ横断歩道への注意喚起用の巨大少年人形に思わず微笑む 撮影・宮嶋茂樹

「最初の目的地だ」

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 観音開きの後部ドアが開け放たれると一番後ろに詰め込まれていたワシのキャリーバッグが転げ落ちてきた。そのあとは医薬品、骨折治療のサポーターなどが次々降ろされていく。体育館から避難していた住民であろうか次々人が現れ、積み荷を体育館に運び入れていく。皆不思議と無言である。

 ここはドニエプル川東岸である。毎夜ロシア軍からの砲撃におびえる日々を送ってきたせいであろう。こんなワシでも医薬品ぐらいやったら運ばせてもらうで。と4つまで運びいれたところで、「ここはこれまでだ」と言われた。

医薬品が無事届き安堵するイゴール(右)と地元医療関係者にカメラマン。とりあえず「ホッと」した 撮影・宮嶋茂樹

 イゴールは地元リーダーらしき青年と軽く握手を交わした後、フォードに飛び乗った。

「さあ急ごう。次だ」

足元から腹に響く爆発音! 近い! 5キロ以内

 郊外をさらに1時間ほど縫い、こんどは病院に到着した。

「ここは北の前線に一番近い病院だ」

 これまた軍が警備する外来患者が通る表玄関でなく、それこそ救急車が患者を運び入れる救患口から積み荷を運び入れる。あっ、これはわしでも分かる。点滴の管や。こっちはさっきも見た骨折の添え木というかサポーターやな。これは義足かな?

 なんせ後部座席一杯の医療品である。院内からお手伝いか白衣姿の看護師らしき3人もでてくるや、イゴールと固い抱擁を交わした。

「よく来てくれた」「おまえこそよく生きてたな」旧知のドクターらとお互いの無事を喜ぶイゴール 撮影・宮嶋茂樹

「俺の友人で同僚だ。こちらは日本のカメラマン、積み荷運びの手伝いもお願いしている」

「いえいえ、よろしう……」

 その時であった。足元から腹に響く爆発音!

(近い! 5キロ以内)

 首をすくめたワシの目の前でイゴールらは半透明の最新式の骨折サポーターの説明を続けていた。この連続した爆発音がまるで聞こえないみたいに。

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