文春オンライン

「炊飯時間をずらすだけで命が救える」東日本大震災後に広まった“ヤシマ作戦”の舞台裏…石巻出身の20歳青年に「エヴァ」公式が賛同したワケ

『防災アプリ特務機関NERV 最強の災害情報インフラをつくったホワイトハッカーの10年』より #1

2022/03/24

ヤシマ作戦とは?

 アニメ『新世紀エヴァンゲリオン』のテレビアニメ版(1995~96年放送)第6話、および映画『ヱヴァンゲリヲン新劇場版:序』(2007年公開)に登場する作戦名だ。

 主人公・碇シンジが乗るエヴァンゲリオン初号機が敵である第五使徒「ラミエル」(新劇場版では第六使徒)を超長距離から攻撃する。そのために必要な大量の電力を、日本中を停電させることでエヴァンゲリオンの陽電子砲に集中させた。

 電力不足の可能性や節電の呼びかけを見て、この言葉を思い出したファンは多かった。やがて「必要な場所へ電力を届ける」ことから転じて、節電や電力使用の時間帯をずらす「ピークシフト」への協力を呼びかけるキーワードとしてヤシマ作戦が使われるようになった。

ADVERTISEMENT

〈節電に協力しよう!みんなの電力を必要な場所へ!ヤシマ作戦のごとく!〉

〈思えば東京電力から節電願いがでてるんだった。ヤシマ作戦を思いながら布団でガタガタ震えてるわ。寝る〉

〈ヤシマ作戦に協力してるつもりになって、さぁ電気を消すんだ!本当に必要な人々のために!〉

 ツイッターにはそんな投稿が並んだ。

 大のエヴァンゲリオンファンだった石森もヤシマ作戦を思い浮かべていたひとりだ。そして、石森にはひとつの「武器」があった。ツイッターアカウント「特務機関NERV」だ。

「特務機関NERV」のツイッターアカウントより

『新世紀エヴァンゲリオン』に登場する国連直属の非公開組織・特務機関NERVは、作中で敵・使徒のせん滅を主要任務とする。ヤシマ作戦を発動したのもNERVだ。

 石森は2010年2月、この特務機関NERVを名乗るツイッターアカウントを立ち上げていた。エヴァンゲリオンファンが「遊び」で始めたなりきりアカウント。現実の台風や津波を使徒になぞらえ、作中のNERVが使徒襲来の警報を発するかのように地震情報や気象警報をツイートする。

 当初は手動でツイートしていたが、10年7月に気象庁のサイトを巡回して情報を取得し、警報の発表と解除を自動でつぶやくプログラムを開発した。

関連記事