リリース初日に10万件ダウンロード
当時はメンバー全員がリモートワーク。みなが開発完了の余韻に浸り、パソコンの画面から離れなかったという。
朝3時23分
〈ツイッターに『9月1日になったから、今日NERV防災アプリ(仮称)リリースされる日だ、ワクワク』って書かれてる!〉
特務機関NERVがアプリをリリースすることは、7月の気象庁の記者会見で明かした以外、オープンにしていなかった。報道各社向けのプレスリリースもまだ出していない。広報の由井文がリリース直後に記事を出してもらうためオンラインメディアの編集長とやり取りはしていたが、ユーザー向けの宣伝は全くしていなかった。
それでも、気象庁との会見内容を覚えていたのか、ツイッターなどにはアプリのリリースを待ち望む投稿が複数見られた。それだけ、あの特務機関NERVがどんなアプリを出してくるのか、期待感は高かったのだ。
だがすんなりとはいかなかった。日が昇り、11時のリリース時間が迫るなかで新たなトラブルが発覚する。
5時30分
〈本番環境で解析雨量が出なくなってます!〉
〈橘さん、わかる?〉
5時31分
〈いま直してます‼〉
そして8時7分、ようやく最後まで修正を続けていた橘の作業が終わった。
〈自分の作業は終わりです。あとは待つだけ!〉
〈お疲れ様でしたー!!!!〉
10時53分
〈公開時間迫ってきた!〉
アップルストアでのアプリ公開は11時の予定だった。ただし、リリース直後は掲載が安定せず、ストア上に表示されるユーザーとされないユーザーがいる。公開から20分ほどたって、メンバーのスマホでもアプリが表示された。
そして、正午ちょうどにはツイッターでも特務機関NERV防災アプリのリリースを発表した。
〈みなさま、大変お待たせいたしました。
「特務機関NERV防災アプリ」の提供を開始しました。そして、Androidユーザーの皆さんごめんなさい。Android版は後日公開となります。
最初に表示されるメッセージをよくお読みになってからご活用ください。〉
この発表に、ツイッターでは5万を超える「いいね」や「リツイート」などの反応が寄せられ、アプリのダウンロードもリリース初日に10万件、3日後には16万件を超えた。
iPhoneユーザーからは喜びの声が、アンドロイドユーザーからは早期の開発を求める声がいくつも届いた。
「リリースした直後から、SNSにアプリのスクリーンショットをあげてくれている人が大勢いました。『こんな防災アプリ、みたことない』とみんなが言ってくれていた。僕らが『自分たちで使ってみたい!』と思ったところから本格的な開発が進んだアプリを、ユーザーも同じように感じてくれている。そのことがものすごくうれしかったです」(石森)