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200万ダウンロード超えの防災アプリ「特務機関NERV」 気象庁職員が「ここまで使えるのはほかにない」と認める“最強の災害情報インフラ”誕生秘話

『防災アプリ特務機関NERV 最強の災害情報インフラをつくったホワイトハッカーの10年』より #2

2022/03/24

特務機関NERV防災アプリの機能

 いま、特務機関NERV防災アプリでは平常時でも以下の通り多様な情報が確認できる(2021年10月現在)。

 ・「ホーム」タブ

 全国、現在地、登録地点(無料会員3カ所、サポーター会員6カ所まで)の雨雲の様子、気象警報・注意報の発表状況、天気。火山エリアの場合、降灰予報

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 ・「タイムライン」タブ

 全国、現在地、登録地点の過去3日間の警報・注意報の発表/解除や地震発生の情報

 ・「レーダー」タブ

 過去1時間から14時間先までの雨雲の動き、現在の解析雨量・土砂災害の危険度分布・洪水警報の危険度分布・浸水害の危険度分布、台風の現在地と進路予想、アメダスによる全国の気温・雨量・風・積雪の状況、24時間前からの解析積雪深、3時間おきの天気分布予報

 これらはいずれも地図を拡大縮小でき、全国の状況を確認できる

 ・「天気予報」タブ

 全国の天気、現在地・登録地点の今の天気・3時間ごとの降水確率・7日後までの天気・天気概況

 そして驚くのは、すべての機能が無料で開放されていることだ。2020年9月からサポーター会員制度(月額250円と480円)をスタートさせたが、サポーター会員の「メリット」は無料会員だと3カ所までの地点登録が6カ所まで可能になる、一部の機能を一般会員向けに開放する前に「アーリーアクセス」としてお試し利用できる、オリジナルストーリーが読める、ウェブ会員証が発行されるなどで、アプリの機能そのものは変わらない。

 無料会員でも、広告は一切入らない。サポーター会員制度はあくまで、特務機関NERVの趣旨に賛同した人がその活動をわずかながらサポートするためのものだ。これには石森らの強い思いがある。

「有料会員専用の機能をつくると、私たちが必要性を感じて開発したものを一部の人にしか使ってもらえない、届かないことになってしまう。それでは意味がありません」

 サポーター会員制度も当初は構想になかったという。ただ、アプリのレビューに「お金を払わせてほしい」という書き込みが目立ち始めた。

「寄付したい、投げ銭のようなシステムを作ってほしいというお申し出もいただきます。でも、投げ銭方式だと『災害があるとお金が集まる』という図式になってしまう。ならばサブスクリプションのような形でお気持ちをいただこうという形をとりました」

 新機能を実装する際はサポーター会員向けに先行開放するが、無料会員向けにも時期を見て提供される。アメダスのデータを使った全国の気象情報を提供する機能を実装した際は、当初サポーター向けの先行開放を予定していたが、台風が接近している状況を鑑みて先行開放を取りやめ、全ユーザーに向けて一斉に開放した。

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