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上沼恵美子(67)が語る、M-1への“苦言”「ああいう漫才に点を入れてはいけないという空気を感じた。全部知った体でみなさん観てますよね」

上沼恵美子(67)が語る、M-1への“苦言”「ああいう漫才に点を入れてはいけないという空気を感じた。全部知った体でみなさん観てますよね」

上沼恵美子さんインタビュー ♯3

2022/04/15
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グニューって群青色の汗を流せと思う

ーー「スベり芸」とか、確かに不思議な言葉ですよね。

上沼 そう、だって私ら商品なんですよ、自分が。これ、ほんと真剣勝負なんですよね。それを今の方々は、部活動みたいにしてはります。「同じ汗をかいて、一緒にスベったら、怖いもんなしやな。よっしゃ、みんなでスベろうぜ」って言ってる感じがする。それが怖い、私は嫌いです。

――それはなんでしょう、真剣勝負で「負けた」自分を認めたくない、傷つきたくない、みたいなことでしょうか。

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上沼 これはもう私、この年やからええ格好といいますか、大きな口をたたかせていただくと、なんじゃそりゃって思います。お前らアマチュアかって思います。アマチュアでギャラ貰うなよってね。

 芸人さんが東京から来て、振ったのに何の笑いもとれなくて、私が引き取って笑いにして、それなのに平気で新大阪で駅弁こうて、スーパードライ飲みながら、アハハ言うてね。

 

「みんなスベったもんな」みたいな仲間意識になるのはあかんと思うんです。よく芸人さんがDVDを持ってきてくれて、ほとんど捨てるんですが。

――捨てる(笑)。

上沼 ナイツとサンドウィッチマンのだけはちゃんと観て笑って。あとはちゃんと捨てます。

 みなさんDVD作ってもらえるから、勘違いしますよね。包装紙で包んで、リボンでくくってくれるわけだから、自分の置かれているポジションを誤解する。そもそもひな壇座って6年ですって、6年も座っとるんかいって思いますけど。

――そこに安住してしまう。

上沼 浅い汗を流してるだけですから。グニューって群青色の汗を流せと思うんですよ。そうすると勝ちますよね。

 日本が貧しい時に給食が始まったようになってる。みんな一緒に食べようっていうね。でも、やっぱり自分だけは松花堂弁当を食べるようになろう、次はフグ食べられるようになろう……そうやって上がっていくもんだと思うんですよ。

 

 だって自分が商品なんですから、自分の血を流さないと絶対支持してもらえません。ほんと、仲間意識は違うとこで出せと思いますね。

 でもね、かばっていた彼らだって本心じゃないと思いますよ。ざまあみやがれって思ってるんですよ。でも口ではそんなこと言わん。それにまたネットはおどらされて「かわいそうやわ。上沼さんってむちゃくちゃ言いよるね」って。そうネットで言う人たちも、自分の身に置き換えたら「椅子空いたな」って思うに決まってる。

――テレビに出る方も、観る方も、いい人だと思われたい。

上沼 そういうことです。今はどこでもデビューできるんですよね。それこそYouTubeでデビューできるわけですから。テレビに出るまですごい劇場で頑張ったとか、やっとテレビ1本入ってきたなとか、そういう時代じゃないので。

 たやすいんですが、その分厳しいですよ。自分で投げた槍が自分に返ってきますからね。ブーメランのように。だからそれを思っておかないと。誰もが、もう投げてばっかりで、投げた数も覚えてないというような、そんな無責任じゃあかんと思いますよ。

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