トランプや支持者にとっての“フェイクニュース”とは
――フェイクニュースは、トランプの重要なキーワードでもありますね。
横田 トランプにとって、フェイクニュースかどうかの基準は、自分にとって都合がいいかどうかです。だから報道が事実かどうかは関係なくて、自分が嫌いなニュースのことをフェイクニュースと呼んでいるんです。
――本書で象徴的なのが、「ニュースの80%はフェイクニュースだ」「トランプのツイッターが事実だ」という支持者の言葉です。
横田 このトランプ支持者は、政府機関が発表する新型コロナによる死亡者の数もトランプの大統領選挙を不利にするためのフェイクニュースだと言うんです。それでフェイクニュースと事実とはどこで線引きするのかと聞くと、「トランプのツイッターだよ」と答える。
確かに、普通の大統領はなかなかウソまではつかない。だから大統領のツイッターが事実の基準だというのは、わかる。でもトランプにはそれは当てはまらないですよ。なぜならトランプの発言をファクトチェックし続けているワシントン・ポストによると、大統領在任中に3万回以上のウソや誤解を与えることを言っているんですから。
もっとも、そうしたファクトチェックも、トランプや支持者にしたら「フェイクニュースだ」となるのだけれども。
――そういえば先日、ロシアで「フェイクニュース」とみなす報道を広めた者は投獄するとなりました。為政者が「フェイクニュース」を決める、これは怖いことですね。
横田 アメリカの場合、大統領のトランプが自分が気に入らない報道をフェイクニュースと4年間も呼び続けた。日本でも河野太郎が、「フェイクニュースだ」とよく言いますよね。イージス・アショアの配備手続き停止が報じられたときなどがそうです。事実なんだけれども、報じるタイミングが気に入らないからといって、そう呼んだ。「フェイクニュース」という言葉を遣うかどうかは、危険な政治家、駄目な政治家を見つけるための基準になるんじゃないですか。