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汚い言葉を平気で遣うことも、トランプの人心掌握術

――あえて下卑た言葉を遣うことで、怒れる物言わぬ多数派(サイレント・マジョリティー)の代弁者を演じていると、渡辺靖『白人ナショナリズム』をもとにトランプの言葉遣いについても書かれています。

横田 汚い言葉を平気で遣うことも、トランプの人心掌握術になっています。「サノバビッチ(son of a bitch)」なんて卑語を、大統領ならふつうは言わないですよ。でもトランプは言う。すると支持者たちは「よく言った」と沸くわけです。それで「俺たちの大統領だ」となる。

 対照的なのがヒラリー・クリントン。彼女の場合、「私」は「私」でも「わたくし」という感じでしょう。エスタブリッシュメントで、お高くとまっているというか、近づきにくい感じですよね。彼女が2016年の大統領選挙でトランプに負けたのは、そういう機微のようなもので競り負けたといえるのかなと思います。

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卑語に耳を塞ぐような女性たちまで掴んでいった

――その一方で、男性に対する敬称「Sir(サー)」を繰り返し遣うことから「厳しくしつけられている」と思われる19歳の女子大生がトランプ支持者として出てきます。彼女は、トランプの卑語に喜ぶ男性支持者とは対極にあるように思います。

横田 この女性は教会に熱心に通う家庭で育ち、「生命尊重派(プロライフ)」でもあります。聖書の解釈では人工中絶は殺人にあたるため、認められないという立場です。彼女は、トランプが人工中絶に反対してくれるからという理由で支持者になる。

 人工中絶や同性婚、銃規制に反対する人たちは共和党を支持しますが、それぞれ反対派としてバラバラに存在していました。その人たちをトランプは「トランプ支持者」として、ひとつにまとめ上げた。日頃は「サノバビッチ」なんて卑語に耳を塞ぐような女性たちまで、トランプは掴んでいったんです。

 トランプ支持者というのは、ほんとうに色々な人がいて、面白い。理解しがたい話も多いのですが、そういう話をする人がいるのも事実です。だから事実は事実として、『「トランプ信者」潜入一年』に並べていきました。

――それこそ陰謀論は理解しがたいですね。後半はQアノンなどについて、うかがっていきます。