Q ウクライナが何度も求める「飛行禁止区域」…NATOが設定したら何が変わる?
ウクライナが再三にわたり、NATOに「飛行禁止区域」の設定を求めています。ただ、素朴にロシアとウクライナは地続きなので、ウクライナよりも西側の集団であるNATOが飛行禁止区域を設定しても関係ないのではないかと思います。飛行禁止区域をNATOが設定したら、実際に何が変わるのでしょうか。そして、なぜNATOはこれまで設定してこなかったのでしょうか(30代・男性・会社員)
A 「飛行禁止」と宣言してもロシア軍の戦闘機や爆撃機が飛行したら意味がありません。そこで…
飛行禁止区域を設定するとは、ウクライナ上空をロシア軍の飛行機が飛ぶことをNATOが禁止することを意味します。
でも「飛行禁止」と宣言してもロシア軍の戦闘機や爆撃機が飛行したら宣言の意味がありません。そこで、飛行禁止を設定した場合、NATO軍(おそらく米軍)の戦闘機が常に上空をパトロールし、空域に入ってきた航空機は有無を言わさず撃墜する態勢を取ることを意味します。
湾岸戦争の後、米軍はイラク北部のクルド人をイラク軍から守るため、クルド人地区上空を飛行禁止区域に指定し、空域に入って来たイラク軍機を撃墜する態勢をとっていました。このときイラク軍は地上から攻撃用レーダーを照射して地対空ミサイルを発射するかのような姿勢を見せたことがありましたが、そのたびに米軍機はレーダーサイトを空爆しました。
もしウクライナ上空を飛行禁止区域にした場合、米軍機がロシア軍機を撃墜したり、地上のロシア軍がレーダーを照射したら空爆したりすることになります。「飛行禁止区域を設定する」とは、こういうことを意味するのです。これでは第三次世界大戦になりかねません。なのでNATOはウクライナの頼みを受け入れないのです。
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