昨年に25周年を迎え、いまなお揺るがぬ人気を誇るマジックミラー号。だが、そのエキセントリックな企画内容が広く知られる一方で、舞台装置としての「車両そのもの」に光が当てられることは少ない。
世界に1台しかない特殊車両は、一体どんな機能や装置を備えているのか。ミラー号の運行や維持、撮影にあたって、これまでどのようなトラブルがあったのか。
マジックミラー号内部への潜入を許された我々は、その構造や機能を細部まで調査。あわせて、ソフト・オン・デマンド株式会社(以下SOD)代表取締役社長の野本ダイトリ氏と、同社車両部のベテラン社員2名に、車両にまつわるエピソードや、今後のマジックミラー号に対する見通しについて話を聞いた。
製作費5000万円、迫力の展開シーン
現在撮影に用いられるマジックミラー号は、2001年に製作された「2代目ミラー号」である。初代のミラー号はベニヤの箱を2tトラックに載せた簡易的な構造だったが、2代目の製作にはおよそ5000万円という費用がつぎ込まれ、撮影の幅を広げるさまざまなギミックが盛り込まれている。
やはり特筆すべきは、スーパーアンビュランスなどにも見られる大がかりな展開機構である。架装部分の製作は、特殊車両の製造を専門とする大手車輌架装メーカーに依頼した。
ベースとなっているのは三菱ふそうの「キャンター」であり、通常時は何の変哲もない白いトラックに見える。しかし運転席側のハッチを開けば、荷台部分に格納されていたカプセルがスライドし、6畳ほどのスペースが生まれる。なお、展開の際には「アウトリガー」と呼ばれる機構により地面に対して水平を保つなど、事前の調整作業が必要になる。
こうした作業の特殊性から、ミラー号を運行できるのは車両部のベテラン2人に限られている。2人とも、整備士やディーラーマンとしての経歴を持つ車のプロだ。